人工妊娠中絶を受ける権利を巡って今、全米が大きく揺れています。ことの発端は、米連邦最高裁の判事が書いた中絶の権利を否定する意見書の草案がメディアに流出したこと。それによって、1973年に女性が人工中絶を受ける権利を憲法で保障した「ロー対ウェイド裁判」の判決を覆そうとしていることが明るみとなり、全米各地で抗議デモが起きています。

中絶する女性の権利を覆す可能性のある最高裁判決が予想され、デモが行われている (22年5月14日、シカゴ)(AP)
中絶する女性の権利を覆す可能性のある最高裁判決が予想され、デモが行われている (22年5月14日、シカゴ)(AP)

ハリウッドセレブたちからも、「自分の体のことは自分が決める」と抗議の声が上がっています。アメリカではここ数年、アラバマ州やジョージア州、テキサス州など南部で相次いで事実上中絶を禁止する州法が施行されており、エンターテインメント界では「中絶禁止」に反対する運動が活発化しており、今回のリーク記事を巡ってもさっそく多くのセレブが反対の立場を表明しています。

■エイミー・シューマー

米政治サイト、ポリティコが、今月2日に中絶の権利を認めた判決を覆す最高裁の多数意見草案を入手して報じた翌日には、ニューヨークで大規模な抗議デモが行われ、そこには今年のアカデミー賞授賞式で司会を務めたエイミー・シューマーの姿も。

登壇したシューマーは「この裁判所はジョーク」と皮肉たっぷりに抗議し、中絶を受ける権利の必要性を訴えていました。シューマーは、1964年に安全ではない非合法な中絶で亡くなった女性の名前にちなんで名づけられた中絶の権利を保護する新たな法案ゲリサントロ法の成立を支持する公開書簡にもイーサン・ホークスやジュリアン・ムーア、マギー・ギレンホールらと共に署名しています。

■ビリー・アイリッシュ

かねてより中絶禁止に反対の立場を表明しているビリー・アイリッシュは報道を受け「信じられない。怒りで真っ赤になっている」とバラエティ誌にコメント。女性の性と生殖に関する医療サービスを提供する非営利団体プランド・ペアレントフッドが、13日にニューヨーク・タイムズ紙に掲載した草案に反対する意見広告にも名を連ねています。

「#BanOffOurBodies(私たちの体に禁止令を課すな)」と題された全面広告には、他にもアリアナ・グランデ、セレーナ・ゴメス、ヘイリー・ビーバー、マイリー・サイラスら160人の著名人が名を連ねており、錚々たる面々の中には、英ロンドンを拠点に活動する日本人女性シンガーソングライターでモデルのリナ・サワヤマの名前もあります。

アイリッシュは昨年、妊娠6週間以降の中絶は強姦や近親相姦であっても禁止する事実上の中絶禁止法を施行したテキサス州でのライブで、「年老いたオヤジたちには本当にムカついている。私の体は自分で決める!」と中指を立てながら客席に向かって叫んだことが大きな話題になりました。

■オリビア・ロドリゴ

デビューアルバム「サワー」を引っさげてツアー中のオリビア・ロドリゴは、4日に行われたワシントンDCでの公演で、中絶保護法が無効になる可能性について「過去に多くの人たちが懸命に努力して得た権利。私たちの体は、絶対に政治家の手に渡してはダメ」と発言。「安全な中絶をする権利が守られるよう、声をあげて欲しい」とファンに訴えたことが報じられています。

■シンシア・ニクソン

大ヒットドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」のミランダ役で知られ、政治家に転身したシンシア・ニクソンは、3日行われたニューヨークでの抗議デモに参加した様子をSNSに投稿しています。

ニクソンは過去に、自身の母が中絶が合法になる以前に違法な中絶手術を受け、ひどい経験をしたことをインタビューで明かしており、生殖の自由の重要性を訴えているセレブの一人として知られています。

■マーク・ラファロ

抗議の声を上げているのは女性ばかりではありません。「アベンジャー」シリーズのハルク役で知られるマーク・ラファロも、SNSで「出産の強要と違法な中絶が州をまたぐことは、逆行で残酷」と投稿し、抗議しています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)