「日本一チケットの取れない講談師」神田伯山(36)は、明日を見据えて稽古をする。今年2月、真打ちに昇進したばかりだが、披露興行や独演会が立て続けに中止となった。終息後、寄席に出られることを想定し、芸を磨いている。一方、動画投稿サイトYouTubeでもファンの拡大を狙う。「全力で好きなことに没頭し、自分の長所を伸ばす」。これが、寄せられたメッセージだ。

   ◇   ◇   ◇

どの商売も同じだと思いますが、講談は1日やらないだけでも衰えを感じます。自粛で、最初の10日間ボーッとしてたら気持ちの良いくらい衰えました(笑い)。これは大変だと思いまして、普段より稽古しないといけないんだと悟りましたね。お客様の前で何日も高座がない状態って、講談師としては非常に危険なんです。たとえば、鍛えていないプロレスラーは魅力がないし、本番でケガするそうです。

また、師匠の神田松鯉(しょうり)の元へは、コロナが無症状でも感染させてはいけませんので、対面の稽古に行けません。あくまで自主練なんですね。なので自分との闘いです。また、これがよく負けるんですね(笑い)

冗談はさておき、真打ちとして歩み始めたばかりの今は、圧倒的に未来を見据えています。それを軸にして、現在と過去に向き合っています。ここが耐える時でしょう。実力をグングン伸ばして、また多くのお客さまにお越しいただき、喜んでいただけるよう頑張ります。

寄席に出られなくても、手応えを感じている新たな取り組みもあります。コロナの前から、ユーチューブ「伯山TV」というのを計画していました。チャンネル登録者は12万6000人を超えました。実を結んでいる気がします。多くの人に見てもらい、新たな講談ファンを増やしていきたいですね。

今まで講談の仕事で休みがなかったのですが、本を読む時間もできました。これはこれで大事な時間。

4月27日にNHK総合で放送された「ファミリーヒストリー」という番組で、私の高祖父が福岡庄太郎という柔術の猛者で、南米で教えていたという事実が分かりました。格闘技は大好きですが、まさかわが高祖父も柔術家で、レスラーと異種格闘技をしているとは知りませんでした。関連本も読み込んでいます。

好きなことに没頭できるのはいいことです。長所を伸ばしてやりたいことをやる。あなたが今したいことを、全力で自分を伸ばす時間だと割り切って、向き合うといいと思います。ボーッとするのも良いと思います。ただでさえ、鬱々(うつうつ)とする毎日、好きなことを自粛しながらやりましょう。

あと、コロナが終わったら「これをしたい」と思っていることがあるのですが、何と何と、文字数が…。この続きはいずれまた。(構成・赤塚辰浩)

◆神田伯山(かんだ・はくざん)本名・古舘克彦。1983年(昭58)6月4日、東京都豊島区生まれ。07年に3代目神田松鯉門下に入り、神田松之丞(まつのじょう)を名乗る。12年6月、二つ目昇進。落語芸術協会の同期の二つ目落語家とのユニット「成金」メンバーとして活動。今年2月に抜てきで真打ち昇進、同時に44年ぶりに講談界の大名跡である「神田伯山」を襲名した。