歌舞伎俳優の尾上菊之助(46)が25年5~6月に「八代目尾上菊五郎」を襲名することが5月27日の会見で発表されましたが、同時に父である尾上菊五郎(81)が「七代目菊五郎」の名跡を継続するとの発表には驚きました。七代目と八代目の「菊五郎」が並び立つのは、歌舞伎400年の歴史の中でも初めてのことでしょう。
父から子への名跡継承の場合は、九代目松本幸四郎が二代目松本白鸚となり、七代目市川染五郎が十代目松本幸四郎を襲名したように、父が俳名などに改名し、子が大名跡を受け継ぐケースが大半です。
また、「市川團十郎」では二代目、四代目、七代目の團十郎が海老蔵を名乗り、子や養子が三代目、五代目、八代目として團十郎を襲名した例もありますが、父と子が同じ名跡で舞台に立つということは前代未聞です。
当代の菊五郎にも、前例にならって、俳名である「三朝」や前名の「菊之助」に戻るという選択肢がありました。しかし、それ以上に30歳で襲名して以来、52年も名乗っていた「菊五郎」のままで歌舞伎人生をまっとうしたいという思いが強く、「七代目菊五郎」の名跡を続けることになりました。
会見で菊五郎は「わがままを聞いていただいた。舞台でバッティングすることもあると思いますが、七代目、八代目と呼んでいただければ」と話しました。極めてレアなケースにせよ、こういう襲名の在り方もあるのかなと納得した思いもあります。
娘で女優の寺島しのぶは「ユニークな人。かぶいているひとだと思う」と父の前例にとらわれない、勇気ある決断を称賛しましたが、これが今後の襲名の先例になるかもしれません。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




