岸惠子さんが亡くなりました。93歳でした。岸さんは映画、ドラマの出演が多く、舞台は一人芝居を含めて数少ないのですが、46年前に西武劇場(現在のパルコ劇場)で主演した舞台「情婦-検察側の証人」を見ています。アガサ・クリスティの原作で、演出は映画監督の市川崑さん。市川さんは初めての舞台演出で、当時パリに住んでいた岸さんをわざわざ呼び寄せての舞台でした。

岸さんが亡くなって、さまざまな人が追悼のコメントをしていますが、横浜の高校で1学年下の下級生、映画で何度か共演している草笛光子さん(92)も追悼しました。岸さんは終戦の年の1945年4月に横浜第一高等女学校(現横浜平沼高校)に入学し、草笛さんは46年に入学しました。戦後の混乱した時期に同じ校舎で学んだ二人は、学内のダンスサークルでも先輩・後輩でした。「恋愛観も生活スタイルも私とは正反対だけど、芸能界での唯一のお友達」「自分のスタイルを貫いて旅立ったあなたを、女優として、後輩として、友として誇りに思います」としのびました。

草笛さんは自分の著書「いつも私で生きていく」でも、「女優同士では、相手に聞いたり、言ったりしないようなプライベートなことを、彼女とはたっぷり語り合ったものです」「私の打ち明けた辛い話に彼女が涙したこともあるし、もちろん、その逆もありました」「普通の女として、人間として、お互いを信頼して、胸の内を見せられるかどうか。そういう女友達がいることは嬉しいことです」と、岸さんとの固い絆を明かしています。

かつて二人が「徹子の部屋」にそろって出演した時、同世代の黒柳徹子さん(93)はかつて二人が「徹子の部屋」にそろって出演した時、同世代の黒柳徹子さん(93)は「あなたがたおふたりが仲のよいお友達だったとは、知らなかったわ」と驚いていたそうです。75年におよぶ太く、長く、濃密な交流でした。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

草笛光子(2024年撮影)
草笛光子(2024年撮影)