タイトルがネタバレ系の映画は難しい。ストーリー展開でいかに観客の満足度を上げるかが鍵となる。特に今作は「泣くだろう」と予想できてしまう。ただ、思いもしなかったところで涙があふれた。

 突然意識を失った麻衣(土屋太鳳)の病名は「抗NMDA受容体脳炎」という300万人に1人の病気。回復の見込みは立たない。婚約者の尚志(佐藤健)は毎朝バイクで病室に通い、眠る麻衣を見舞い続ける。

 土屋の演技には驚いた。これまでの出演作から天真らんまんなイメージを抱いていたが、発作を起こし絶叫しながら運ばれるシーンは戦慄(せんりつ)もので、反射的に涙が出た。昏睡(こんすい)状態でも無意識に体は動き、目を覚ましたら全身のリハビリが待っている。本当の闘いはここからだったのだ。演技力が求められる難しい役柄は、土屋を一回り成長させた。

 作品のモデルとなった中原さんご夫妻は14年に“8年越し”の結婚式を挙げ、翌年には子宝にも恵まれた。愛とか奇跡とか、安っぽく聞こえるけれど、こんなにも素晴らしいものかと温かい気持ちになった。

 意識の戻らない恋人を、あなたは何年待てますか。【杉山理紗】

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