正月のトーク番組で、女優の木南晴夏がプライベートの食事会で感じた竹野内豊のオーラを語っていた。

「来られたときに、ふわーって風が吹く感じがあって、そこにいた女子全員が目を合わせたんですよ」

裁判官を主役にした異色のドラマ「イチケイのカラス」(21年)では、確かにこのふわっとしたオーラが生かされていた気がする。

どんな権力者もとんがった被告も、竹野内ふんする型破りな裁判官、入間みちおの包み込むような言葉にはあらがえない。横やりを避けながら、真実にたどり着く法廷に毎回留飲を下げた。

映画化の舞台はみちおの異動先、瀬戸内の小さな町だ。ドラマではちぐはぐな裁判官コンビを組んだ黒木華ふんする生真面目な坂間千鶴は「他職経験制度」で期間限定の弁護士となり、くしくも同じ町に。巧者らしい間合いで竹野内に絡み、今回も笑いを誘う。

2人が挑むのはイージス艦の衝突事故をきっかけに見え隠れする国家機密の闇。若き防衛相に向井理、ワケあり弁護士に斎藤工。ともにポーカーフェースでなかなか真相を読ませない。ドラマに続く田中亮監督は、原作読者やイチケイ視聴者のツボを押さえている。【相原斎】

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