米・ニューヨークを舞台に、ショーマンのヘクターが見つけた、魅惑の歌声の持ち主でありながらステージ恐怖症で取り残されたワニのライルが、突然現れたひとりぼっちの少年・ジョシュと歌で心を通わせるミュージカル映画。今の自分から変わろうと必死になる姿に引き込まれる。
ベストセラー絵本を原作に、楽曲は俳優志望とピアニストの恋愛を描いた、16年公開の「ラ・ラ・ランド」、興行師P・T・バーナムを描いた17年公開の「グレイテスト・ショーマン」の音楽チームが担当。オリジナル楽曲だけでなく、世界的ポップナンバー「クロコダイル・ロック」なども音楽シーンを彩り、歌でしか会話出来ないライルの気持ちをより際立たせる。
音楽としぐさで自分を表現するライルは目の動きや体の使い方が秀逸。吹き替え版でライルを演じたのは大泉洋。出演を知っていても驚くほど、繊細で温かな歌声でライルの思いを歌い上げる。うまく歌うだけではない難しさを見事に演じ、洋画離れが進む昨今だが、吹き替え版でも楽しめる一翼を担っている。
物語の展開は読めるかもしれない。だが、何かをきっかけに人は前向きになり、日々の生活すら一変することを凝り固まった大人へ教えてくれる作品だ。新生活が始まる春に、元気をくれるはずだ。【加藤理沙】
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