「漫才は、もともと男の筋力が必要なものです。君たちの受賞で、新しい時代が来た思いです」
このコメントの主は、中田カウス上方漫才協会会長。2023年1月、女性コンビ「天才ピアニスト」が上方漫才協会大賞に輝いた時にエールとして贈られたメッセージだった。
カウス会長の言葉を生で聞き「しゃべるのは男も女も同じやのに、漫才は男の方が有利なのか~。ひとつ勉強になったなあ」と記憶に刻まれた。その天才ピアニストはその後も、上方漫才大賞新人賞を獲得し、単独公演(主に、よしもと漫才劇場)は毎回満席の人気ぶり。
で、THE Wである(天才ピアニストは22年に優勝)。今回の粗品(霜降り明星)の審査員コメントは、切れ味抜群だった。
「笑いのレベルが低い」「賞金1000万円に見合っていない」
それは粗品自身のお笑いに対するこだわりであり、どこか予定調和を感じさせる賞レースの審査に、本音と真剣味をズバズバぶつけてみせた。
今年3月のytv漫才新人賞決定戦でも、粗品の審査コメントは光っていた。無難に褒めて、放送時間を意識してまとめて終わり、というものでは収まらなかった。「面白くない人が優勝しないように、しっかり審査します」と本番前に話していたが、まさに真剣勝負だった。
THE W放送後のSNSでは「粗品が言うように、おもしろくなかった」「そもそも男女別で分けるのがおかしい」「賞金1000万円は高い」などの批判が飛び交った。
果たして、女芸人はレベルが低いのか?
背景のひとつに競技人口の問題がある。日本がWBCで優勝したのは高校野球という文化が長きにわたって根付いており、選手の裾野が広いことが大きい。かつてサッカーW杯出場など夢の夢だと思われていた日本で、Jリーグが始まり、少年サッカーが盛んになるに連れて日本代表も強くなっていったのも同様。プレーヤーを見れば、漫才やコントの世界はまだまだ男が多い。
若手芸人が競う「よしもと漫才劇場」のメンバーを手元の資料で数えると、コンビ・トリオ103組中、女性コンビはわずか4組しかいない(男女コンビはのぞく)。過去のM-1グランプリで女性コンビが優勝していないのも、それだけ数が少ない現実を無視できない。さらに、カウス会長の言う「漫才は男の筋力が必要」という壁が立ちはだかっているのかもしれない。
よしもと漫才劇場に行くと、客席の9割は女性が占めている。それも20代30代が多い。若手芸人は彼女らのアイドルでもあって、結果男性コンビの活躍がより目立つことになる。
あえて言わせてもらうなら、THE Wよりも「レベルの高いはず」のM-1グランプリ決勝だが、過去にはテレビで見ていてもさほど笑えないコンビが意外にいた(主観です)。
つまるところ、見る側の好みや笑いのセンスが演者とどれだけマッチするか、だと思う。おもしろいか否かは女性コンビであることとは関係ない。
古い話で恐縮だが、その昔テレビで見た海原お浜・小浜さん(ともに女性です)の漫才は子どもの目にもおもしろく、ゲラゲラ笑えた。そのDNAを受け継ぐやすよ ともこ(小浜さんは、2人の祖母にあたる)やハイヒールの実力は誰もが認めるが、後に続く女性コンビはまだまだ少ない。
新たなスター候補を発掘し、世間に広く知らしめるという意味で、THE Wの存在意義は小さくないと思えるのだが。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミへキタへ~」)




