あの人の教えがあったからこそ今がある。北海道にゆかりある著名人たちの、転機となった師との出会いや言葉に焦点をあてた「私の恩師」。日本ハムの試合で札幌ドームに流れる応援ソング「La La La FIGHTERS」。歌うのは札幌市出身の歌手、福原美穂(28)だ。抜群の歌唱力で活躍の場を広げている人気シンガーは、札幌南が丘中時代の音楽教師に背中を押され、音楽の道に進む決意を固めた。今も当時の授業や言葉を思い浮かべ、活動の原動力にしている。

 札幌南が丘中学校で担任だった秋本ゆか先生は音楽の先生でした。音楽のことに熱心な方だったので、すごく影響が大きかったです。

 授業も彼女のスタイルが面白くて。もともと声楽とかオペラの世界で勉強してきた人なんです。たぶんあまりいないと思うんですけど、中学の生徒に対してインドネシアの伝統音楽の映像とかを見せるんです。ワールドミュージックのビデオを「はい、今日はビデオを見てください」って、けっこう見たりしました。

 オペラに関しても、ものすごい熱心な方でした。イタリアの音楽をイタリア語で歌う授業もありました。テストもあったんですよ。1人ずつ呼ばれて歌うんです。「オー・ソレ・ミオ」って曲をやりました。張り切ってイタリア語を覚えて、ちゃんと巻き舌で歌った記憶があります。声楽の先生なので、声の出し方とかを授業の中で指導してくださったので、それは今の仕事で生きていると思います。自然と先生の教育が入っていますね。

 合唱コンクールがあるときは頼られていました。いつも私はリーダーになって「みんなに教えて」って。ソプラノ、アルト、テナー、バス、私は全部覚えているんですよ。全部歌えるから、リズムを取ったり、メロディーを教えたりしました。言うことを聞かない男子に怒ったりしましたね。

 授業の仕方はすごく怖かったんですよ。歌わない人は怒られたりして。本当に怖い先生で、ちゃんと怒ってくれたんです。真っ正面から向き合ってくれて、分かりやすい言葉で話してくれて、温かい人だなって。怖い分、愛情もたくさんありました。

 進路を選ぶとき「あなたには素質がある。絶対音楽の道に行きなさい」と強く背中を押してくださりました。「ヨーロッパの声楽の学校に推薦するから行きなさい」って言ってくれて。でも当時はポップミュージックだったりソウルミュージックがやりたかったので、そう話したことを覚えています。たぶん彼女もオペラ歌手になりたかったと思うんです。自分の夢もあっただろうから、そういう道に進んで欲しい、娘を思うような気持ちで言ってくれたんじゃないかと思います。

 私は音楽をやりたいと思っていたので、素晴らしい先生なんだなってずっと思っていました。今になっても授業の記憶がありますし。独特の教育方針だったし、本当にプロフェッショナルを目指した人の教育方針であると思ったし、そういう人に出会えて感謝しています。自分の信じているものを、ちゃんと教える人でした。特別な感じでした。

 自分の人生の分岐点で悩んだり音楽のことを考えたりしたとき、先生が励ましてくれた「ちゃんと音楽の道を突き進みなさい」って言ってくれた言葉を思い出すことがあります。あっ、頑張らなきゃって。こういう仕事だからこそ恩返しできることもあるだろうし、頑張っている姿も見せることができると思います。

 普通の先生と生徒という形ではなく、本当に音楽を志しているので、そこは共通点であり、いつでもフィードバックできます。ゆっくり話したいなって、今度札幌に来たときにご飯行きたいなって思います。【取材・構成 井上学】

 秋本さん 表裏のない子でした。音楽が大好きな真面目な生徒でしたね。小学時代は吹奏楽部で、中学では家で歌っていたようです。素直な伸びやかな声で、才能がある子だなって思っていました。声楽の道に進んでくれればな、なんて思ったりもしたんですよ。東北地方に行った中学3年の修学旅行で、バスの移動中にマライア・キャリーを歌ったんですけど、すごく上手でみんなビックリしました。これまでZepp札幌のライブに行ったりして応援してきました。これからも長く歌手を続けて欲しいです。赤ちゃんを授かったみたいで早速メールをしました。中学の時に妹が出来たので下の子の面倒をよくみていました。いいお母さんになると思います。元気に産んでいい家庭を築いてほしいですね。(97~04年まで札幌南が丘中、現在は札幌常盤中に勤務)

 ◆福原美穂(ふくはら・みほ)1987年(昭62)6月19日、札幌市生まれ。15歳の時、テレビ出演がきっかけでスカウトされる。道内限定ミニアルバムを2作発表し、道内だけで1万枚を超える大ヒットを記録した。08年2月に日本人として初めて米ロサンゼルスの黒人教会で「奇跡の子」と称されるパフォーマンスを披露する。同年4月にシングル「CHANGE」でメジャーデビュー。09年1月の初アルバム「RAINBOW」は15万枚を売り上げた。これまでに発表した楽曲は、渡辺謙主演「沈まぬ太陽」や妻夫木聡主演「悪人」などの映画、テレビドラマ主題歌などに起用されている。