バウ・ワークショップ花組公演「殉情(じゅんじょう)」は、兵庫・宝塚バウホールで、帆純まひろ、一之瀬航季主演の2パターンで上演された。ともに初主演。帆純は10月13~21日、同30日~11月7日を一之瀬が主演し、両班ともに完走した。

■「男役10年」帆純先陣

一人前の目安とされる「男役10年」の帆純が、役代わり主演の先陣を切り、バウ初センターに立った。

谷崎潤一郎の名作「春琴抄」のミュージカル化。宝塚では95年、02年に絵麻緒ゆう主演で上演。08年にはバウ・ワークショップとして、早霧せいなと蓮水ゆうや主演で再演されている名作のひとつ。舞台は明治時代の大阪。薬問屋の盲目の娘、春琴に仕える佐助の愛と献身を軸に、美しくも残酷な愛の形を描いた。

13歳で薬問屋に奉公へ上がった佐助は、琴、三味線の稽古に通うお琴(春琴)の手を引き、その才能を崇拝。後に三味線の稽古を始め、お琴から厳しい指導も受ける。深く慕う佐助の心はお琴にも届くが、その愛は究極の結末へ進む。

ひたすらにいちずな佐助を帆純が熱演。相手役ヒロインは、6年目の朝葉ことのが地に足のついた演技を見せた。

帆純は、13年入団の99期生。08年の前回再演時、主演した元雪組トップ早霧せいな似として注目され、19年「CASANOVA」で新人公演に初主演した。

開幕前日夜に、通し舞台稽古で最終確認。「明日からの本番も頑張ります」と誓い、全日程をつとめた。

■幻の新人公演コンビ

後半チームの主演は、9年目100期生の一之瀬航季。初主演予定だった20年「はいからさんが通る」新人公演は無念の休止だったが、今回、ついに初センターに立った。相手役ヒロインの美羽愛も「はいから-」ヒロイン予定で、幻の新人公演コンビとなった。

1期先輩、帆純からバトンを受けた主演役代わり公演。愛を抑えても、情があふれる。一之瀬は、美羽ふんする春琴をいちずに思う佐助を好演。9年目ながら老け役も経験したスターが、初主演の舞台で、耐える佐助を全力で表現した。

開幕前日だった10月29日夜には通し舞台稽古を終え「明日初日から千秋楽まで、前半チームの思いも背負って、皆で頑張りたいと思います」と決意表明。美羽も小さくうなずいた。

また、前後半通し役で臨んだスターも多く、春琴に好意を抱く大店の道楽息子、利太郎は峰果とわが好演。後半では役柄をブラッシュアップして表現した。