本コラムの脱稿後、ふとテレビをつけ、配信でドラマを見る。画面に映し出されたのは7月クールのグルメドラマ、設定からキャストから何から何まで面白く、ついさっきまでパソコンの前で仕事をしていたことを忘れ夢中で見入る。そして、気が付いたら主演の子が気になってネットで検索なんかもしてみる。ふと思う、今この子をコラムに書かないでいつ書くの?と。もちろん目の前には出来たてほやほやの原稿とイラストがある…。徹夜覚悟でPCの前に再び戻ることに。

改めて。意欲的なドラマを毎クール輩出するテレビ東京からまたまた名ドラマ誕生の予感です。タイトルは「お耳に合いましたら。」。チェンメシ愛を語るポッドキャスト配信を始めた主人公を中心に、恋愛、友情、親子…などさまざまな人間関係が描かれるとのこと。7月9日からテレビ東京系「木ドラ24」枠において、毎週金曜0時30分~1時の間にて絶賛放映中である。

おじさん世代にはチェンメシ?ポッドキャスト?と??が続くが、チェンメシとはどこの街にもあるチェーン店グルメのこと。ドラマの中では第1回の松屋からはじまり、次に餃子の王将、富士そばと、独身にはなじみの深いお店がこれでもかと並ぶ。ポッドキャストはインターネット上で音声や動画のデータファイルを公開する方法のひとつ。気軽に個人で始められるラジオみたいなものかと。まとめると、チェンメシである松屋のカレギュウのおいしさを伝えるため、スマホ片手に音声でポッドキャストで発信する主人公を描いたドラマです(笑い)。

グルメドラマ。ヒットした「深夜食堂」「孤独のグルメ」以降、数々の作品があるが「チェンメシ×ポッドキャスト」の掛け合わせはさすがに新しいのではなかろうか。そして、毎話ゲストに吉田照美に、やついいちろう、クリス・ペプラーとレジェンドDJが登場し、ラジオ愛を奏でる。そもそも脚本にマンボウやしろが入っているあたり、ラジオ好きな人が企画しているに違いない。誰もが番組パーソナリティーになれる時代をうまくついた良企画である。

また、氷川きよしのポッドキャスト番組と連動させるなど、嫌みのないセンスよいプレイスメントも続く。さらには内容自体も、グルメレポだけでも商品だけを扱う1話完結でもなく、主人公がポッドキャストを通じて成長していく様が描かれているのも好印象。例えが合っているかわからないが、食べたことのないメニューばかりの幕の内弁当といったところだろうか。

そこで今回取り上げるのは、主人公の高村美園演じる「伊藤万理華」。元乃木坂46という経歴だが、ドラマを見るまでは存じ上げず…すみません。現在25歳、女優以外にもデザイン専門誌で連載をしたり、個展を開催するなど多才ぶりがうかがえる。また、映像作品も多数こなし、舞台では、『月刊「根本宗子」』で主演を務めるなど、早くから芝居の才能を見いだされた感がある。いやー、ほんと勉強不足で恥ずかしい。

そして、現在公開中の映画「サマーフィルムにのって」では主演。映画の監督が本ドラマの演出を務めていることがドラマ主演抜てきの理由なのかもしれないし、もしくは反対のパターンなのかもしれない。愛嬌(あいきょう)のある丸い顔にショートカットが似合い、服装含めてサブカル臭がプンプンとする。

SNSを見る限り、同性にもかなり人気があると思われる。そんな彼女が深夜にカレギュウをほおばるのだから、見ているこちらはおなかが減って相当つらい(笑い)。ドラマを見たかんじはまり役だとは思うが、もっと他での演技も見てみたいと思わせる力量はさすが。ドラマの続きとともに、今度注目の女優さんです。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画『リュウセイ』の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。今夏には最新作「元メンに呼び出されたら、そこは異次元空間だった」が公開。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)