前回のコラムで、俳優になるためには、と触れさせてもらったが、今回は俳優になる環境について考えてみる。一番わかりやすいのが2世俳優と呼ばれる人たち。親が売れっ子であれば、俳優の仕事とは何かを体現しながら育っていくであろう。普通の親は家でセリフを覚えないし、長期間家を空けたりはしない。
また、舞台観劇ひとつをとっても違いが出る。身近に関係者がいれば、本人の興味とは別に早い段階で触れることになるが、普通の家庭ではそうはいかない。自身でいえば、これまで4本舞台演出をしているが、最初にちゃんと演劇を見たのは30歳を過ぎてからである。多感な時期にきちんと演劇に出会っていれば、演出家としてもう少し売れていたのかもしれない(笑い)。
スポーツの世界でも似たようなことが言える。大谷翔平は父親が野球、母親がバドミントンで活躍、久保建英は父親が名門大学のサッカー部出身である。運動経験のない両親に比べればいろいろアドバイスもしやすいのであろう。
しかし、スポーツをしている親はたくさんいるが、俳優となると話は別。そこで推奨するのは、何でもよいのでトップ集団にいることを心掛ける。勉強であれば東大を目指す、野球であれば甲子園、もちろんメジャーな競技でなくてもよい。とにかく、日本で一番を目指すことをおすすめする。競技人口が多ければ多いほうがいいが、人気の種目でそれなりの成績を残すよりも、どんな競技でもよいので勝ち続けることの大切さを学ぶことのほうが大事だと思う。
さてそこで今回紹介したいのは、現在放映中のドラマ「六本木クラス」で主演を務める竹内涼真(29)。4歳からサッカーをはじめ、高校時代には名門東京ヴェルディユースに所属。特に強かった世代であり、チームメートに後のJリーガーが多数。本人はけがの影響もありプロ選手を断念したが、その後モデルのオーディションを経てホリプロ所属からの仮面ライダーデビューを果たした。
一見エリートコースのように見えるが、ライダー俳優全員が全員うまくいくわけではない。そう考えると、素質はもちろん、サッカーでプロを目指していた経験が大きく影響しているのではないかと思う。スポーツの話に戻るが、野球で言えば巨人の坂本と楽天のマー君は小学生時代にバッテリーを、サッカー日本代表の南野と室屋も同郷の幼馴染だという。
野球とサッカー、人口の多いスポーツにおいて、幼馴染が日本代表になる可能性が一体どれくらいあるだろうか。そう、ライバル同士、上を目指して切磋琢磨(せっさたくま)した結果なのではないかと思う。
ちなみに「六本木クラス」、オリジナルが良すぎるのでもちろん賛否はあるが、堂々たる演技を魅せている。オファーを受けた際のインタビューで、「難しい挑戦になるが、目の前のチャンスに飛びつかない選択肢はなかった」と答えていたのが印象的であった。まさに、サッカー選手が海外移籍する時に発するようなコメントであり、競技を変えても一流のメンタリティーを保っていることに違いない。Jリーガーにはなれなかったが、俳優の世界で日本代表になる日は近い。
◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーに。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。今年は2月に演出舞台「政見放送」を上演、5月20日には最新監督映画「さよならグッド・バイ」が公開された。8月10日から14日までは演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」を上演。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。
(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)





