大腸がんで主演舞台を降板した俳優今井雅之(54)が30日、ステージ4の末期がんと病状を告白した。東京・新国立劇場で行われた「THE WINDS OF GOD」(5月1~5日、新国立劇場)の公開稽古前に会見。転移の可能性にも言及し、涙をこらえながら「病には勝てなかった」と頭を下げた。

 今井はやせ細っていた。登場すると取材陣に一礼し、「これが精いっぱいの声です」と、かすれた声で降板までの経緯と病状を説明した。「自分の判断で降ろさせてくれと…」。目に浮かべた涙をこらえ、声をつまらせながら続けた。

 「病に勝つと思ったけれど、勝てなかった。本当にすいません」

 昨夏に体調不良を感じ、11月中旬、兵庫・西宮市の病院で、CTスキャンの検査を受けた上で医師に告知されたという。「『末期がんです。ステージ4です』と言われました。悔しかった。でも、もっと怖かったのは腸閉塞(へいそく)。大腸がんの大きい腫瘍が2つできて、ふさがっていたので」。医師からは「あと1回か2回、食事か水分をとったら腸が破裂するところだった」と告げられていた。

 その後、横浜市内の病院で「イチかバチかで」受けた開腹手術が成功したという。一方で、都内の病院で始めた抗がん剤治療が合わず、「どんどん歩けなくなり、声も出なくなりました」と説明。現在は別の病院で、2クール目の抗がん剤治療に入っているという。

 その上で、体調不良を感じた当初に都内の病院で「腸の風邪」と診断されたことについての悔しさをにじませた。「ふざけるなです」。

 転移については、「可能性大。影が見えてます。悪性か良性になるか今後のストレスです」。担当医には「生きているだけならモルヒネをうって殺してくれと言いました」と明かし、「安楽死。つらいです」と言った。

 今年2月23日に行われた同舞台の制作会見までは、共演者、ファンを思い、本当の病名を語らなかったが、舞台降板発表後にはブログで「ホンマに悔しい」と胸の内を明かしていた。一方で生きる望みは持ち続け、この日も「よくなると信じています。秋まで寿命を持たせて」と言葉を絞りだした。

 ◆大腸がん 結腸、直腸からなる、約2メートルの大腸に発生するがん。症状としては血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、腹痛など。発見には便潜血検査、大腸内視鏡検査が有効。ステージ4での5年生存率は15%前後。

<今井の病状経過>

 ▼今年2月23日 舞台「ザ・ウインズ・オブ・ゴッド」の制作会見で、昨年11月に腸閉塞の手術を受けたことを報告。体重が20キロ減ったが、リハビリも順調としていた。

 ▼同4月21日 同舞台の降板を書面で発表。昨年11月の手術は、実は大腸がんの手術だったと明かした。入院せず、抗がん剤治療を受けているとし、「開腹手術や抗がん剤の影響で舞台上での発声に限界がある」と、現状を報告した。