俳優中井貴一(55)が、3日公開の映画「花戦さ」(篠原哲雄監督)で、俳優人生で初めて織田信長を演じた。中井がニッカンスポーツコムの単独取材に応じ、衰退の一途が叫ばれる時代劇への思い、製作現場におけるコンプライアンスの問題など、思うことを直言した。
「花戦さ」は、花僧・池坊専好(野村萬斎)が、生け花、芸術の力で天下人・豊臣秀吉(市川猿之助)をいさめる物語。中井は専好の花を認めた織田信長を演じた。1981年(昭56)8月公開の映画「連合艦隊」でデビューしてから35年あまり…中井にとって、信長は演じたいと強く願っても巡っては来ないと思っていた役どころだった。
中井 僕は多分、信長役は来ないだろうと思っていましたね。戦国武将なりをいろいろやったとしても、きっとキャスチングボートには、信長のところに僕の名前が上らないんだろうと、ずっと思っていました。信長をやれるんだって思うと、うれしかったですよね。役者の人生って、面白くて、そう何回も同じ役って、やらないじゃないですか。1回、信長をやったら…これが最後なんだろうと思いますけど、やってみたい歴史上の人物であることは変わりないわけであって。(撮影は)2日間であっても、いい時間でしたね。
-名前が上らないと思った…その心は?
中井 みんなが持っている信長のイメージと役者・中井貴一というイメージが、とても離れているって、プロデューサーの人は思うと思ったんですよね。役者とはいうの基本的に、化けるのが仕事じゃないですか? でも、プロデューサーの人たちは(1)化けたことまで想像できるプロデューサーと(2)世の中のイメージでキャスティングする人と、2パターンいる。役者をやっていて…やっぱり、化けた後、この人に、どう化けさせるかということをキャスティングできる人は、名プロデューサーなんだろうなと思っていました。今回は、化けた後を想像してくれたんだろうなと思って、うれしかった。
近年、時代劇衰退への危機が叫ばれてきた。大映が倒産した翌年の72年に、大映京都撮影所の撮影、照明、美術などの技術者集団が立ち上げた時代劇制作プロダクション・映像京都が、10年8月にテレビの時代劇減少や後継者不足などを理由に解散。11年にはTBS系「水戸黄門」が終了し、地上波の時代劇レギュラー番組は、NHK大河ドラマのみとなった。中井は、そうした状況に真正面から向き合い、14年の映画「柘榴坂の仇討」に主演するなど、時代劇作りに真正面から取り組んできた。
中井 時代劇の現場って、役者よりもスタッフが知っていなければいけないんです。とにかく、知識を持っている人たちがスタッフの中にたくさん存在していないと、成立しないんですよ。役者のことは、僕たちが後輩に継承していく。「お前、そんな動きやっていたら、おかしいだろう」と言える。でも技術職のことは、僕たちは到底、口を挟めることじゃないし、そこのスタッフがいなくなった瞬間に、本当に時代劇の質が落ちるんですよ。
次回は中井が、時代劇衰退の危機と、なぜ作り続けていかなければいけないかを語る。【村上幸将】



