故6代目笑福亭松鶴一門で、13年7月に亡くなった笑福亭松喬さん(享年62)の名跡を継ぐ、松喬門下総領弟子の笑福亭三喬(56)が20日、大阪・道頓堀の角座で、7代目松喬の襲名公演を発表した。

 「(師匠の)6代目(松喬)は松鶴落語を極め、私はそこに闊達(かったつ)さを加え、闊達な7代目松喬になれればと思っております」

 戦後の上方落語をけん引した大看板の1人だった6代目松鶴。その一門にあって、松喬さんは、武骨ながら「最も松鶴落語を継承した弟子」と言われ、笑福亭一門の代名詞ネタ「三十石」や、古典「らくだ」も得意としてきた。その松喬さんの総領弟子、三喬は、師匠と同じく「落語一筋の武骨で不器用な男」を自覚している。

 昨夏に襲名を発表してから約1年。今秋からの襲名公演を控え、あらためて「松喬一門は(演目を増やし)ネタ帳を増やしていくことだけを考えろ、と。これからは7代目松喬のネタ帳を増やしていきたい。これまでのネタ帳も物を言うと思う」と話し、83年の入門から鍛え上げてきた高座の腕には自信を見せる。

 上方落語協会では現在、創作の第一人者である6代桂文枝(74)が会長としてけん引。三喬は「会長が創作派なので、しっかりした古典派が上がってこい、と思っておられると思う。古典があっての創作ですから」との自負も崩さない。

 文枝といえば、先日、富士山登頂を果たし、頂上での奉納落語を演じたが、三喬は「私は富士山には登れませんが、しっかりと高座には上がります」と笑わせた。

 一方、襲名をめぐっては、一門では、大師匠「松鶴」の名跡が空位のままで、初代松喬が後に初代松鶴を名乗った因縁もある。

 これに三喬は「もう襲名は今回限り。私はもともと名前欲がまったくないんですが、師匠の名跡は総領としての責任で(継ぐ)」と言い、実母から仕込まれ、日本男児の象徴としてとらえる東郷平八郎をたとえにあげて「バルチック艦隊を討つのに、(松喬襲名で)もう弾を使い果たしますんで、今回の襲名に全力を傾けたい」と話していた。

 襲名公演は10月8日の大阪松竹座からスタート。桂福団治、桂ざこば、桂文枝、桂南光、笑福亭鶴瓶、柳家さん喬、柳亭市馬ら東西から落語家が多数、出演する。襲名公演は来年5月の角座まで、全国14カ所を予定しており、三喬は「現在の(6代目松鶴)筆頭、仁鶴師匠にも、体調が戻り次第、上がってもらえればうれしい」と語った。