尾野真千子(36)は助演女優賞に輝いた。「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で19、27、53歳を1人で演じきった。「例えば衣装、髪形で、50代を作ってくれていると思うだけですんなりやれました。皆さんがすごく頑張ってくれて、私、頑張ってないんです」と笑った。監督の意向で特殊メークを施さず、声のトーンや歩き方を変えた。「19歳はきっついだろうって、思ったりするんですけど、心の中ではできる、みたいな変な自信があったりして」。確かな演技力を評価されての受賞に「びっくりする。10~50代をやってラッキーというのもありますよ。でも親孝行、会社孝行、関わってくれた人たちの孝行になるから、とてもうれしいです」。

 中学時代、ロケハン中の河瀬直美監督(48)に見いだされ、97年主演映画「萌の朱雀」でデビュー。同監督の07年カンヌ映画祭グランプリ受賞作「殯の森」も主演した。華々しい経歴を築く一方、素顔は女優のイメージを覆させられる。「運動もそんなに好きでもないし習い事もしない。休日はカップラーメンを食べたりとか好きなものを食べています。今年は時間があったので、日傘もささず日焼け止めも塗らず、日焼けをガンガンしました。シミも気にしなきゃいけない年なんでしょうけど、それが、自分のありのままの姿なので」。

 その姿勢は、女優としてのスタンスにも一貫している。「年を取れば取るほどそれが味になる。しわや白髪を生かしながら、自分のありのままがにじみ出るものに挑戦していきたい」。【近藤由美子】

 ◆尾野真千子(おの・まちこ)1981年(昭56)11月4日、奈良県生まれ。映画は「クライマーズ・ハイ」「探偵はBARにいる2」「そして父になる」「ソロモンの偽証」「きみはいい子」など出演多数。ドラマは11年NHK連続テレビ小説「カーネーション」など。161センチ。血液型A。

 ◆ナミヤ雑貨店の奇蹟 敦也(山田涼介)は幼なじみと悪事をはたらき、廃屋に逃げ込む。そこはかつて悩み相談を受けることで知られたナミヤ雑貨店。郵便受けに32年前の悩み相談の手紙が入っていた。時空を超えて晴美(尾野真千子)と手紙のやりとりをする。広木隆一監督。

 ◆助演女優賞・選考経過 「20代のうちにこれだけのことができる女優はそういない」(寺脇研氏)と黒木華も人気だったが、「毎年気になる役がある女優。強い役ではないが気になる」(木下博通氏)と評価された尾野真千子が2回目の投票で過半数を獲得した。