-娘役の広瀬すずについて

 すずちゃんってすごく寡黙で静かなんです。キャピキャピ話す感じがなくて、いつも静かにスマホを見ているか、コーラのハードグミをかんでるか、そんな感じの印象で。法廷のシーンで勢ぞろいした時は打ち解けてきて、アプリで撮った写真を交換した思い出がありますね。すずちゃんの魅力だと思いますが、ニュートラルに心を開いてくれる。自然に周りが彼女と話をしたいと思うし、好きになる空気をまとっている。自然に母子の感じがつくれたんじゃないかなと思います。是枝組独特の、自然でやわらかい感じ、誰かが気負って、女優だ、俳優だ、僕が、私がという感じがない空気感のなせるわざです。

 -微妙な関係の親子役は難しかったのでは

 すずちゃんが演じた役から見ると、母であると同時に、加害する存在でもある。しかも明らかな形ではなく、潜在的な意味で加害してくる役。だからアンビバレントな感情(=相反感情)を抱く。私(が演じた役)も愛情でありながら、圧倒的なエゴイスティックな押しつけがある。でも娘に対しては純粋。ただ、その場にいて、与えられた役とシチュエーションがあって、カメラが回れば、何を意図するのか気持ちをつくるとかしなくても、自然とそういう芝居が生まれてきたというか…。ただそこに、エゴイスティックに、セルフィッシュに、ピュアに娘を愛しているという母として存在している。だから、無理して頑張ったという感じではないですね。

 -自身も母親

 母として、子供に対して、程度の差こそあれ、自己愛や、自分の夢や願望が混じった押しつけをしていることは間違いない。それ抜きに子供を見られるほど私は人間ができていないし、大方の親の越えるべきハードル。みんなそことの戦いをしながら育てていると思う。自分自身と重ねる部分、共感している部分はあったと思います。