日々さまざまなステージ、舞台あいさつ、イベントなどを取材しているが、元AKB48柏木由紀(34)の新曲リリースイベントはある意味で新鮮な体験となった。
柏木は7日、ラゾーナ川崎プラザで約5年ぶりのソロ曲「シアワセ記念日」発売記念のミニライブを行った。自身のソロ曲を歌唱する前に、AKB48の代表曲「ポニーテールとシュシュ」「大声ダイヤモンド」を披露し、会場のボルテージを上げたのだが、この場面にある種の違和感を覚えた。
耳なじみのあるイントロから始まるが、いわゆるコールと呼ばれる、ファンからの掛け声が存在しなかった。アイドルのステージを取材すると確実に耳にする「よっしゃいくぞ~!」や大きな声で演者の名前を呼ぶ声が聞こえないのだ。もちろん柏木はグループを卒業している。分かっていても、どこか肩透かしを受けたような気分となった。
というのも、会場はラゾーナ川崎プラザという大型ショッピングモール。そういった場所柄もあり、周囲への影響を踏まえ開演前には「声出しNG、手拍子・拍手のみでお願いします」というアナウンスがなされていた。
この日詰めかけたファンの中には昔のグッズを身につけたファンもいれば、うちわを持ったファンも多く見られ、おそらくは“古参”と呼ばれる方々なのだろう。
ステージ中、柏木から観覧エリアに目を移すと、口パクでコールを行っている方々もたくさん目についた。アイドルのステージでは「次が最後の曲です」と言うとファンが「え~~~!」と残念そうな声をあげるのが定番の1つで、柏木も普段通りの感覚で呼びかけ、拍手のみを受けた後に「あ、そうだ、声出せないんだったね」と思い直していた。100%ルールが守られていたのかは定かではないが、演者側もファン側も互いに慣れない空気感の中でも決められた範囲で楽しむ姿を見て、「ファンの鑑」という表現が脳裏に浮かんだ。
昨今、リリースイベントという企画が以前より大幅に増えているように思う。演者とファンの距離が近くなり、また新規ファン獲得にも効果的な側面を持つ一方、残念ながらSNS上ではトラブルや混乱の発生といった投稿がされることも見受けられる。ファン側の意識も問われる企画であるのは事実なのだろう。そういった事例も目にしていたため、この日のミニライブは印象深いものとなった。
最後に柏木はファンに、撮影タイムで撮った歌唱中の動画をSNSに投稿するように呼びかけた。「エゴサの鬼なので、ぜひお願いします」。ファンとの信頼関係は、グループを卒業しても強固なまま、もしかするとより強固になっているかもしれない。【寺本吏輝】



