宝塚歌劇団理事で、専科スターの轟悠(とどろき・ゆう)が、18年ぶり再演に臨む主演ミュージカル「凱旋門」は8日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。轟が00年に文化庁芸術祭賞を受賞した主演作で、宝塚のスターが18年前に主演した作品を自らの主演で再演するのは極めて異例。

 「え? という驚きが最初にありました。18年という時(経験)を経て、細かい心理描写は入ってきやすくなりましたが、私としては、新しい雪組のメンバーと新しいラヴィック(主人公)を作りたい」

 轟は、雪組の本拠地公演への出演で主演に立ち、同組トップ望海風斗(のぞみ・ふうと)や、同トップ娘役の真彩希帆(まあや・きほ)らと、名作の再演に臨んでいる。

 舞台は、第2次世界大戦前夜のパリ。祖国ドイツを追われた医師ラヴィック(轟)とロシアから流れてきたボリス(望海)との友情、同じく逃亡してきた娘ジョアン(真彩)との運命的な恋を描く。

 古巣・雪組への出演に「下級生の中にも、役者としておもしろい存在の子や、ムードメーカーに成長してくれそうな子がたくさんいました」と頼もしく感じ、稽古に励んできた。

 大先輩の轟と、親友役でがっぷり組む望海は「男役の中でも、誰もが背中を追い掛ける立場の方と、一緒にお芝居をさせていただくというのは、いつも以上に緊張感を持っていました」と、稽古を振り返った。

 亡命者が集まるパリの町を舞台にした人間ドラマだが、稽古場は笑顔が絶えなかったといい、望海は「イシさん(轟)がすごく気さくに、私たちの緊張をほぐしてくれた」と感謝した。

 今回の雪組公演は「凱旋門」と、全編に猫をイメージしたショー「Gato Bonito!!」の2幕構成。ショーの作・演出は藤井大介氏。藤井氏は、望海を「美しい猫のような男」ととらえ、個性的な振付や、タンゴ場面も取り入れた作品に仕上げた。

 宝塚大劇場公演は7月9日まで、東京宝塚大劇場は7月27日~9月2日。