舘ひろし(68)は、自分が出演した作品について、芝居でああした、こうしたとあまり明かさない人だ。しかし、映画「終わった人」(公開中)については、「中田監督といろいろと話し合って作っていきました。こまかい芝居してます」と、遠慮がちながら、自信を持って話している。

 舘いわく、これまでにあまりない「仕掛ける芝居」をしているという。アドリブや現場で生まれたアイデアをどんどん出し、役を作り上げていった。

 定年後の人生を模索する話で、ネガティブなタイトル。暗く思われがちだが、コメディー作品だ。舘のアイデアで、ちょっと笑える前向きな人物像ができていったという。

 例えば、妻に家を追い出されてカプセルホテルに泊まらざるを得なくなった主人公。わびしい場面だが、主人公は「意外と落ち着くな」と言い、ひょうひょうとスポーツ新聞を見る。コンビニでシャケ弁当(シャケの薄いこと薄いこと!)を食べる時も「意外とイケる」。ほんのちょっとした、何げないせりふだが、人物像の大枠が分かる。これらは舘のアイデアだという。

 中田監督も、舘からアイデアが出た時「それ、もらいます、いいですね」と言ったそうだ。初日舞台あいさつの時は「コメディーのアイデアをたくさんもらった」と話していた。シャケ弁のシーンでは、撮りながら声を出して笑ってしまったとか。

 舘の仕掛ける芝居、どんどん見てみたいと思う。