東京都内の劇場2館から全国累計269館に上映館が拡大した映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)の観客動員が120万人を突破したことを記念した舞台あいさつが6日、都内のTOHOシネマズ日比谷で行われた。

上田慎一郎監督(34)は、6月23日から東京・新宿K’sシネマと池袋シネマ・ロサで公開が始まってからの2カ月強を振り返り「公開から今日で76日目になります。初日が大昔に感じ…永遠のような2カ月間です。2館から始まって最初3週間で終わるはずが、今日で120万人突破」と目を丸くしながら語った。

300万円と低予算で製作されたが、現在、興行収入は16億円を突破した。その状況に、上田監督は「それも、すごいことやと思うんですけど、去年の夏の撮影からずっと走り続けてくれたみんな、応援してくれた皆さんが今の、僕の一番の自慢です」と感慨深げに語った。

この日の舞台あいさつの最中に、テレビ局社員を演じた曽我真臣(35)が「(観客の)皆さん、良い表情していますね。個人的なことですが先日、息子が生まれまして…2日の日曜日です」と、第1子の長男が誕生したことを自ら明かした。曽我は身重の妻がいる中、初日から連日、自主的に舞台あいさつに立ち、その行動に引っ張られるように、メインキャスト人も舞台あいさつに立ち、口コミで作品が広がる原動力となった、大ヒットの影の功労者とも言える存在だ。

曽我は、上田監督が役者のことを愛を込めて「ポンコツ」と呼ぶことに引っかけ「(息子が映画が)上映中にポンコツに育たないか心配」とジョークを飛ばした。上田監督が「『カメ止め』って名前にします?」と問いかけると「残念ながら名前は決まってます」と苦笑いを浮かべつつ「感染者(ファン)の皆さん、妻、息子よ…愛してます!!」と叫んだ。

上田監督は舞台あいさつの最後に「この映画の生みの親は僕たちスタッフ、キャスト。僕らで作ったかもしれないんですけど、育ててくださったのは皆さん…こんなに熱い親がいる映画はない。元気な子が育って、まだまだ遠くに走ってくれると思う。この子の背中を見てくれたらうれしいです」と感無量の様子だった。

「カメラを止めるな!」は、新人監督と俳優を養成するスクール「ENBUゼミナール」の映画企画第7弾。上田監督が13年に小劇団の舞台に着想を受けて発案した企画を元に、17年4月にオーディションでメインキャスト12人の俳優を選び、映画製作を前提としたワークショップを開催。上田監督が12人を当て書きする形で登場人物を描いた脚本を書き、その直しとリハーサルを繰り返し、俳優とともに作り上げた。

17年11月に東京・新宿K’sシネマで6日間限定で行ったイベント上映で面白さが話題を呼び、その後、国内外の各映画祭で評価されたこともあり、6月23日から同劇場と池袋シネマ・ロサで封切られた。公開館が少ないこともあり“最も見ることが難しいと言っても過言ではない映画”と全国で上映を待望する声が相次ぐ一方、脚本が緻密で、見た観客も映画の内容を語ると即、ネタバレになることから“ネタバレ厳禁”の合言葉が飛び交った。

7月25日に、アスミック・エースがENBUゼミナールとの共同配給に乗り出すと発表され、全国で124館へと公開館が拡大した。それを受けて、8月3日には、この日と同じTOHOシネマズ日比谷で初のシネコンでの舞台あいさつとなる、拡大公開御礼舞台あいさつが行われた。上映が終わった劇場、これから公開される劇場を除き、現在、全国149館で上映されている。【村上幸将】