フジテレビ系連続ドラマ「SUITS/スーツ」(月曜午後9時)で、ブレーク中の俳優小手伸也(44)は、今でも時給1200円のバイトを続けている。主演の織田裕二(50)演じる甲斐正午の同僚にしてライバルの弁護士、蟹江貢を演じる“バイト俳優”に実情を聞いてみた。

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演劇がやりたくて早大入学、演劇サークル「早稲田演劇倶楽部」に入った。駆け出しの演劇人に生活のためのバイトは必須だった。

「学生の頃からコールセンターでバイトしてました。でも一時辞めて、演劇一本で食ってたんです。だけど5、6年前に、ある制作会社が倒産しまして、ギャラの未払いが発生したんです。まずい! 3カ月分の生活費が飛んだ。で、昔取った杵柄(きねづか)のコールセンターのバイト」

今年4月に「コンフィデンスマンJP」で連ドラ初レギュラー、そして「SUITS」。バイトに出られないことが多くなってきた。

「1カ月前に出勤予定を提出する自由シフトに変えてもらったんですけど『SUITS』は、いい感じにジャストミートする(笑い)。前は撮影が終わってから、よくバイトしてたんです。それも内緒で。『この後、どう?』って誘われて『この後、仕事なんです』って、実はバイトに行ってる(笑い)。気を使わせるのも悪いし、僕も夢を売る仕事をしてるから。でも今はバラエティーで“バイト俳優”のレッテル張られて引くに引けなくて(笑い)」

もはやバイトは、生活を支えるものではなくなっている。

「別に、いつ辞めてもいいものになっているんです。でも、バイト先で普通の自分に立ち返るのが、僕にとっては大切なこと。お金を稼ぐことの大切さとか、電話の向こうにいる高圧的な人から理不尽な対応を迫られることで気付くんですよ。こういう事が、日常だって。『数時間前には織田裕二と話してたのに』っていうギャップが、僕の中で調律になっている。浮ついた心を引き戻す、流されないための錨(いかり)になっている。自分を係留するためにも、続けられる限りは続けていきたい」

ブレークして、生活が安定した。妻子もいる。

「結婚してますよ。2歳の子がいます。楽をさせてやりたいという思いはあります」

今年4月にフジテレビの看板ドラマ枠、月9の「コンフィデンス-」で連ドラ初レギュラー、10月期に「SUITS」でブレーク。次は月9で主演も…。

「そうですね。そんな機会があればやぶさかではない。でも、どう考えても、そんな需要はない。そんな挑戦をするんであれば、ぜひフジテレビさんで責任を取ってほしい」

小さな夢はひとつだけ。

「強いていうならば朝ドラ(笑い)」

来年4月から広瀬すず(20)主演の朝ドラ「なつぞら」が始まる。狙いは恋人役か。

「僕、ただでさえ気持ち悪いって言われてるんだから(笑い)。今まで続けてきたことを、どんどん、いろいろな場面で表現できるように積み重ねていきたい。それだけです」

ブレークして、全てが変わった。小手伸也自身だけは変わっていない。

◆小手伸也(こて・しんや)1973年(昭48)12月25日、神奈川県生まれ。俳優、脚本家、演出家。早大教育学部卒。早大時代に早稲田大学演劇倶楽部に所属。98年から劇団インナー・チャイルドを主宰。01年フジテレビ「HERO」。03年舞台「コミックジャック」。05年映画「星になった少年」。08年フジテレビ「アナ★バン」で、キャラクター「太陽さん」の声、映画「不灯港」主演。16年NHK大河「真田丸」。血液型B。