BSテレビ東京初の連続ドラマとして15年に第1期が放送された「ワカコ酒」の、第4期が7日から同局でスタートした(月曜深夜0時)。

主演の武田梨奈(27)がニッカンスポーツコムの取材に応じた。第2回は女優としての今後の夢、方向性を聞いた。【村上幸将】

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09年の映画「ハイキック・ガール!」や、頭突きでの瓦割りで世間をあっと言わせた14年のセゾンカードのCMで、武田は次代を担う本格派のアクション女優として認知された。一方で、アクションのみがクローズアップされることに戸惑いも覚え、愛する映画に軸足を置き、演技力の向上に取り組んできた。クジラの調教師を演じた18年公開の映画「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。」では、泳げないながらもクジラに乗ってのサーフィンに挑んだことが話題となった。一方で、自らの立ち位置に苦悩する、影のある演技も印象的だった。

武田 役を取り込もうとする作業より、ちゃんとリンクして演じようというのが強いので(芝居へのアプローチが)変わったかもしれないです。前までは、すごく嫌なことだったり気持ちが落ち込むことがあっても、ポジティブに見せたり強い発言をして、ごまかす自分がいたんですけど、仕事やプライベートのナイーブな気持ちをすごく大切にして全部受け止める姿勢にしてから、お芝居の感覚が変わった部分があります。ここ1、2年で孤独を感じるようにもなりました。

18年は“静”の年だったと振り返る。

武田 毎年、仕事に対してガムシャラに無我夢中で頑張るぞ、という姿勢だったんですけど…お仕事は、たくさんさせていただいたんですけど、考えたり、いろいろなことを見詰める時間がデビューして10年で多分、一番多かった。仕事、空手の稽古、映画を見る…みたいに、何もしない時間がないくらい自分の中で動き回っていたのが、今年は静と動で言えば静…何もしない時間を自分の中で作って、いろいろなことを考えるようになったので結構、変わりました。

「空手の子」「頭突きの子」などとレッテルを張られ、演技を度外視されることに苦悩した時期もあったが、演技としてのアクション、アクション映画への熱い思いを抱き続けてきた。

武田 ここ7、8年、しつこいくらいアクションをやりたいと、ずっと言い続けています。海外の映画祭に行かせていただくと「ハイキックガール!」と話しかけてくださる方がいるんですよ。すごく、うれしいですけど…この方たちは、10年前の作品(の自分)で止まっている。言ってもらえるのは、うれしいんですけど、塗り替える作品を海外に持って行きたい思いは強いので、20代のうちに絶対にアクションの代表作を作りたいです。

ただ昨今、アクションの需要は決して高くはない。その現状を肌で感じつつも、引くつもりはない。

武田 (アクション映画は)なかなかないですし…ただ、それを言い訳にしているのかな? と感じていて。作品がないから出来ないって、ずっと言っているんですけど、だったら、自分で何か作らないといけないのかな? と。形にするとか明確な何かはないんですけど、自分で作りたいという気持ちが強くなっていて。こういうことがやりたい、というのが自分の中で、ハッキリあるので、企画なども考えてみたい。今までは、そういう気持ちが全くなかったんですよ。こういう作品をやってみたい、役に出合いたいという気持ちだけで、待っていたんですけど…これからは自分でも動きだしていきたい。

出たいアクション映画がなければ、自分で作ればいい…初めて抱いた思いを実行に移し始めている。

武田 最近、企画まではいかないですけど、こういう映画をやりたいとメモ帳に毎日、書きためているので、いつかそれを実現したい。斎藤工さんが演者をする中でも自分で企画、プロデュースして映画を作られているじゃないですか? だから今、こういうのをやりたいんですけど、簡単なことじゃないと思うんですけど、どうやって実現するんですかねと相談していて…。いずれは私も企画して、アクション映画を作りたいという思いが強いですね。

映画を製作するためには資金集めなど壁は高いが、まずは第1歩を踏み出す。

武田 出資を集めてというよりも、お金とかはないけど、まずはアクションシーンなど短いショートムービーを作って世界に発信して、面白がってもらい、そこから大きな映画を、ということも考えています。明確じゃないですし、形になるか分からないですけど。やりたい、やりたいだけ言ってるだけじゃダメだなって、すごく思っていて…。

アクションを磨く鍛錬も積み、海外のアクション映画製作者ともコンタクトを取り続けている。

武田 16年はタイに行って、映画「マッハ!!!!!!!!」(03年)のアクションチームと一緒に稽古をさせていただき、ショーも見ました。インドネシアのアクション映画シリーズ「ザ・レイド」のギャレス・エバンス監督とも連絡を取ったり、海外のチームとのいろいろな企画が、少しずつ動きだしています。20代のうちに、絶対に何かしらアクション映画の代表作を残すのが目標の1つです。

アクション映画への熱い思いを持ちつつも、ごく普通の等身大の女性を演じ、シリーズ化した「ワカコ酒」を長期化する夢もある。その思いをさらに強くしたのは、2月18日放送の第7話で共演した“酒場詩人”として知られる吉田類(69)との共演だった。

武田 「ワカコ酒」は「10」までは続けたいですね。続けられるものだったら、ずっと続けたいですけど…まず「10」までいくのが目標。食べものとお酒は、無限にあると思うし(グルメドラマは)エンターテインメントだと思っています。吉田類さんは、家を建てられるくらい飲んだとおっしゃっていたので「君は次の番だ」と言ってくれた言葉を無駄にしちゃいけないと思うので、それを超えるくらい頑張らなきゃなと思っています。まだまだ、先は長いですけど。

2020年の東京オリンピックも、武田の気持ちを高めている。

武田 2020年に東京オリンピックがあって、空手が初めて正式種目に選ばれました。今まで、空手という単語だけは世界中の方が知っていたと思いますけれど、より空手の魅力だったり、深みを世の方たちに知っていただけるきっかけになると思うんです。私の目標は、昔から変わらず、日本と世界の懸け橋になれるような役者になることです。私はもう選手ではないですけど、役者として日本の文化だったり、空手というものを、映画を通して世界に広めて行けたらいいなと。目標は本当にいっぱいありますが、それが1つの目標です。

「ワカコ酒」第4期のスタートと、空手家として期待する2東京オリンピックが1年後に迫った今、武田は静かに燃えている。