昨年大みそかのNHK紅白歌合戦で視聴者を引きつけた“究極の大トリ”のサザンオールスターズ桑田佳祐(62)と松任谷由実(64)のコラボは、ライブ経験豊富な2人のアドリブから生まれた。

サザンが参加した前日30日の全体リハーサルでは、「勝手にシンドバッド」の途中で、全員がステージに登場する演出の練習も行われた。一方、ユーミンはその日、全国ツアー名古屋公演を行っており、参加できなかった。「勝手に-」の途中、全員でステージに出るタイミングもスタッフの誘導によるものだった。

全体リハーサルを取材したが、桑田がユーミンと絡む直前に「サブちゃーん」と叫ぶ場面から、全体リハーサルにはなかった光景の連続だった。桑田は会場をすっかり自分のペースに巻き込んでいた。

ユーミンの方が、桑田よりも年齢が上で、デビューも早い“先輩”。桑田が昨年開催した「平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦」で、「真夏の夜の夢」「ひこうき雲」を選曲していることからも、ユーミンをリスペクトしていることがうかがえる。「先輩、すみません」と恐縮しつつも、ライブの“ノリ”で、ユーミンに密着。肩や腰に手を回して踊ったり、さらにマイクを向けるなど、会場をさらに盛り上げた。

一方、ユーミンも毎年のようにツアーを行うなど、桑田同様にライブのキャリアは豊富だ。桑田との「あ・うん」の呼吸で、センターに出て桑田のほおにキスし、一緒に腰をくねらせながら踊り、盛り上げサポート役を買って出た。関係者は「アドリブでした。ユーミンはライブ感を大切にする方。ライブ感に身を任せたのではないか」と話す。

共演は、86、87年の日本テレビ系音楽番組「メリークリスマスショー」以来。本番後、ユーミンは取材に応じ、久々の共演を「桑田君と『クリスマスショー』で会って以来ですね、ちゃんとお会いするのは。楽しかったぁ」と声を弾ませた後「これで仲直りしたくらいの勢いでした」と笑顔を見せた。得意のユーモアたっぷりにコメントについて、関係者は「ケンカもしておりませんので、久々にご一緒させていただいたことを、独自の感性で、そのような表現で言ったのでは」と推測する。

ライブの盛り上げ方を熟知したスター同士のコラボは、平成紅白の「神回」と呼ぶべき名場面になった。