17日に肺炎のため死去したミュージシャン内田裕也さん(本名・内田雄也、享年79)の83年主演映画「十階のモスキート」の崔洋一監督(69)が18日、都内の内田の自宅を訪れ、故人との思い出を語った。

崔監督は故人との対面前に「40数年の長いおつきあいで、作品を作らせていただき、何よりも監督デビューのきっかけを作ってくださった、最大の恩人。裕也さんがいなければ、映画監督としての生活はなかった。恩人と言うよりも、ともに戦ってきた」と回想。亡きがらにどう声をかけるかとの問いに「うまく言葉にできないですね」と表情をゆがめ、涙をにじませた。

崔監督は、18年7月放送のフジテレビ系「ザ・ノンフィクション」で裕也さんに密着。番組のナレーションを妻の樹木希林さんが務めた。2人の夫婦関係を「時に愛し合い、憎しみあったけど、オーバーでなければ、僕にとっては世紀のカップル」と表現し、「人間として生き抜く力を持った2人が出会い、時に離れ、今天国にいる。2人にしか分からない世界があるのでは」。希林さんが天国でどう裕也さんを迎えると思うかと聞かれると「希林さんのことだから、毒のある軽口で『いらっしゃいませ』とか言っているのでは」と思いを馳せた。

最後に会ったのは、昨年おおみそかの「ニューイヤーズワールドロックフェスティバル」で、当時の様子について「大変機嫌がよかった。お客さんの反応がよくて、素晴らしいライブでした。大きな仕事を終えられて、ホッとして体調を崩されたのでは」と語った。

「十階のモスキート」は83年、崔監督の劇場映画監督デビュー作。また崔監督は18年には、前年の「ニューイヤーズワールドロックフェスティバル」に臨む内田さんに密着したドキュメンタリー「転がる魂・内田裕也 ザ・ノンフィクション」も監督。同作では内田さんの妻で女優の樹木希林さんが亡くなる直前にナレーションを務め、話題となった。