フジテレビは13日、都内で役員会を開き、遠藤龍之介専務(62)の社長就任を決定した。

遠藤専務は、芥川賞作家遠藤周作さんの長男。6月末に予定される株主総会で正式に就任する。

慶大文学部卒業後、フジテレビ入社。編成担当時代、ドラマ「ジュニア 愛の関係」「御家人斬九郎」「銭形平次」などを手掛けた。93年には日本初の長編ハイビジョンドラマ「その木戸を通って」を市川崑監督を起用して制作した。

05年に堀江貴文氏率いるライブドア(当時)によるニッポン放送株買い占め、フジテレビ経営権奪取問題が起きた際は広報部長として対応に当たった。10年常務、13年専務に昇進。同年フジ社長になった亀山千広氏(62)、17年に同社長になった宮内正喜氏(75)をナンバー2として支えた。

周作さんは、息子の遠藤専務に「大学受験は何もならない」と言っていたと伝えられた。そのため、遠藤専務がかつて社長候補に挙がった際、誤解され「高卒社長誕生か?」と一部で報じられ、ネット上で“誤報”が拡散したことがあった。遠藤専務は当時、周囲に「削除を求めようかと思ったけど、角が立つのでやめた」と苦笑いしていた。

2代の社長を支えてからのトップ就任。同局は近年、視聴率低迷に苦しんできたが、ユーモアたっぷりの性格で知られる“遠藤新社長”が本来の「明るいフジテレビ」を取り戻せる可能性もあり、手腕に注目だ。同局関係者は「若い現場にまかせるタイプなので、自由で風通しのよい雰囲気になると思う。マスコミ対応がうまく、局の対外的イメージ向上も期待できる」と話している。

現在、フジテレビと持ち株会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の社長を兼務する宮内氏は、両社の会長に就任する。FMHの社長にはフジテレビの金光修専務(64)が就任する。

◆遠藤周作(えんどう・しゅうさく)1923年(大12)3月27日、東京生まれ。慶大文学部仏文科卒。

フランス留学後、文筆業に入り55年「白い人」で芥川賞受賞。50年代に安岡章太郎、吉行淳之介ら同世代の新鋭小説家たちと「第三の新人」として注目を浴びる。代表作に「海と毒薬」「わたしが・棄てた・女」「沈黙」など。狐狸庵(こりあん)山人と称して、ユーモアたっぷりなエッセーも人気を呼んだ。95年文化勲章。96年9月29日死去。