テレビ朝日開局60周年記念5夜連続ドラマスペシャル「白い巨塔」(22~26日まで、午後9時)の対談企画の最終回を飾るのは、主人公・財前五郎の師、東貞蔵を演じた寺尾聰(72)と、ドラマを手掛けた内山聖子エグゼクティブプロデューサー(54)。

過去の作品にない、やんちゃな東を作り上げた寺尾は、“格好いいジジイ”として視聴者に活力を与えたいという。【遠藤尚子】

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互いに長くテレビの世界に身を置く2人だが、今作が初顔合わせとなった。

寺尾 お名前だけずっと知っていたし、どんな人かなと。簡単にこのドラマにたどり着いたんじゃねえだろうなと思って、その人から声が掛かった。

内山 無理やり会ってもらって(笑い)。

寺尾 総指揮官のプロデューサーがどういうドラマに仕立ててくるのか、非常に興味があった。

内山 「白い巨塔」は何回もやっている作品だけど、寺尾さんの東教授を見たかった。やんちゃな感じがするでしょう?

寺尾 シナリオを読むと、この人の作り方1つでドラマ全体が変わってくるっていう役。東がそういうキャラクターを作らないで、「財前も里見もなんだ、前とそんなに…」っていう声が出ちゃまずい。(自分を指し)ここが違う形だと、向かってくる相手(財前、里見)も違ってくる。

東は財前と対立するが、根底には愛があるという。

寺尾 この東は一体この時どう思っていたんだろう、あんなこと言ってぶつかってたけど、ここに来てこんなこと思ってんじゃねえかな、とかさ。その中に「自分の育てたかわいい弟子」って言葉が底辺のところににじんでる東がいる。それはセリフでもないんだけど、存在している。東が思っていればいいわけ。ずっとドラマをやってきて、そういう風に作ろうっていう人たちと会った時は、すっごくうれしい。

ドラマを通して、寺尾は自分と同じ団塊の世代に伝えたいメッセージがある。

寺尾 個人的に、俳優として残された時間をこのまんまでいいのかなと思うこともある。でもあと何年できるか分からないのに、ここで我慢することはない。

内山 勲章をいただいた方ですよ。「もうちょっと面白いことやりたい」と言うのはすごいです。

寺尾 アメリカなんて、(クリント・)イーストウッドはいりゃあ、みんな全然、年は関係ない。

内山 寺尾さんは体が強いのと、気持ちが若い。

寺尾 あいつらみんなジジイなのに格好いい。日本の芝居では年取ってくると、みんなジジイ(として)しか使わない。だけどジジイはジジイなりに、自分の作りたい形があって、悪くてもちょっと格好いい、悪いジジイをやってみたいなと前から思っていた。それは今回、自分の中でやったつもりだし、それが外から見ると子供っぽく見えるかもしれない。

内山 今回の東は本当にそれが魅力的でした。「子どもたちに譲りましょう」とか「おじいちゃんだから孫に譲りましょう」とかそういうことじゃなく、同じ土俵にいる。

寺尾 (生まれは)昭和22年、団塊の世代の真っただ中。これを今、会社辞めたやつらが見て「バカ野郎、まだやらなきゃ」って思うやつが1人でも出てきたら大成功。見てる人がションボリしないものを作っていかないとさ、何でこの仕事をしてるんだろうって気になっちゃう。

内山 今日見たら明日見ずにいられないっていう。「この人たちの人生に付き合いたい!」みたいな。そういうものに挑戦したいですよね。

◆寺尾聰(てらお・あきら)1947年(昭22)5月18日、神奈川生まれ。66年フォークグループ「ザ・ページ」の一員としてレコードデビュー。68年映画「黒部の太陽」で俳優デビュー。歌手、俳優として活躍し、81年「ルビーの指環」で日本レコード大賞、01年「雨あがる」、05年「半落ち」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。08年紫綬褒章、18年旭日小綬章受章。

◆内山聖子(うちやま・さとこ)1965年(昭40)3月4日、福岡生まれ。津田塾大卒業。88年テレビ朝日入社。秘書室などを経て、95年に同局初の女性ドラマプロデューサーに。「黒革の手帖」「けものみち」など松本清張作品をはじめ、「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズ、「家政婦のミタゾノ」シリーズなど数々のヒット作を手掛ける。

◆白い巨塔 63~65年、続編が67~68年まで「サンデー毎日」で連載された発行部数累計600万部の山崎豊子氏によるベストセラー。教授の座を狙う浪速大学の外科医財前五郎と、対照的な内科医里見脩二の2人を中心に、教授選、誤診裁判を通して人間の欲望や打算を描く小説。