上方演芸界で最も長い歴史を持つ「第55回上方漫才大賞」が11日、発表され、結成26年のシャンプーハットが受賞した。

12年に同奨励賞を受賞してから8年を経ての頂点。こいで(小出水直樹、44)てつじ(宮田哲児、44)は「めっちゃうれしい」と声をそろえて喜んだ。

上方漫才を育て、顕彰する目的で66年に始まった同賞。近年は、大阪市内の会場に観客を入れ、カンテレが公開生放送する形で発表してきたが、今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、公開生放送は中止。同局スタジオからの放送になり、番組終盤に大賞が発表された。

自著「パパは漫才師」に目標として「上方漫才大賞」を掲げていたこいでは、とりわけ思い入れが強く「今日ひとつ夢がかないました」と笑顔を見せた。

長らく、上方漫才界の頂点として君臨する同賞の重み。大賞受賞者には、初回のかしまし娘から、中田ダイマル・ラケット、夢路いとし・喜味こいし、横山やすし・西川きよし、Wヤングら、上方漫才史に名を刻む面々が並ぶ。

上方伝統のしゃべくりを受け継ぎつつも、シャンプーハットの漫才は、ツッコミがなく、独特のスタイル。「Wボケ漫才」で個性を磨き、頂に着いた。

こいでは「正直、『漫才大賞をなかなかとれない理由はそのスタイルじゃないか、漫才大賞用に漫才を1本作った方がいいんちゃうか』っていうアドバイスももらったりした」とポロリ。それでも「このスタンスでとらんと意味がない」と自分たちの芸風を貫いての受賞だけに、感慨もひとしおのようだった。

本来なら客前で漫才を披露予定も、今年はそれがなく、てつじは「2人で泣きながら、これまでのことを思い出しながら漫才しよとかいろいろ考えてました」と苦笑。それでも「また2回目、3回目の大賞をとって、皆さんの前で漫才ができることを目指して頑張ります」と、V2、V3も視野に新たな目標を掲げた。

受賞を伝えたい人を聞かれると、こいでは「帰ったら最初に玄関に来てくれるメス犬のザラちゃんです」。てつじは、こっそり妻には受賞を明かしていたといい「いまいちピンと来てなくて、僕との温度差が逆に良かったです」と笑った。

ただ、現状では、劇場寄席の再開メドも立たず、緊急事態宣言を受けて動画配信もストップ。漫才師を取り巻く厳しい環境にも、こいでは「お客さんの前で漫才がいつできるか分からないので、その日を楽しみにやっていくしかない」と前を向く。てつじは「皆さんの前で漫才が披露できるとき、この賞に恥じないような漫才をしたいなと思います」と、約束した。