新型コロナウイルスの感染拡大を受け、映画の公開延期や上映自粛が広がり、存続の危機に立たされたミニシアターを支援するために、深田晃司監督と浜口竜介監督が発起人となったクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」の立ち上げ会見が13日、YouTubeで無観客記者会見の形で生配信された。

同基金は、クラウドファンディングで集まった金額から各種手数料を引いた金額を、プロジェクトに参加したミニシアター運営団体に寄付の形で分配する。分配対象は「外出自粛の状況があと3カ月続いたときに、閉館の危機に直面する」運営団体で、13日の開始時点で62団体68劇場が参加している。

この日の会見には深田、濱口両監督と、賛同した斎藤工(38)と渡辺真起子監督(51)と全国のミニシアターの関係者が、インターネットを通じてテレワークで参加した。深田監督は「文化の多様性の面で、とても重要。海外の映画人が日本に来て、必ずしも商業的に成功するとは限らない映画を、行政の支援がないにもかかわらず上映するミニシアターが、全国で存在していることに驚かれる」と説明。その上で「広く社会、民主主義に関わる問題。本来は文化予算、納めている税金でセーフティーネットがないといけないが、それがない。手が届くところから動くしかない」と強調した。

濱口監督は「ミニシアターは、シネコンとは違って経営基盤は決して大きくない状況でやっているので、確実に経営危機に陥るのが分かっている。動き始めた10日前の時点で政府が動く気配がなかった。映画ファンを通じてネットワークを作っていくしかない」と説明。その上で「映画だって人の暮らしを撮っている。地方の映画館の人にも生活がある。生活を守るためのアクションを、あらゆるところで起きなきゃいけない」と訴えた。

名古屋シネマスコーレの坪井篤史副支配人は「舞台あいさつが人気の劇場だが、東京の方で週末、休館するとなって監督さんたちが名古屋に来られなくなった。売上がどっと下がり、お客さんがいなくなった。家賃も当然あるが、お金として入ってくるものがない」と厳しい現状を説明。13日に休館となったが「1カ月休館すると、かなり苦しい。3カ月続くと必ず閉館に追い込まれると、我々は分かっている」と語った。

渡辺は「思春期だったり自分の居場所が見つからなかった時に迎え入れてくれたのが映画館。俳優になって、信じられる作品にいたいと思い、たどりついたのがインディーズ映画」と涙ながらに思いを語った。その上で「どうにか事態が収束した時、新しい未来をどう過ごすか。違う視点を分け合えるのが映画館だと思う」と映画の大切さを訴えた。

斎藤は「人命、医療が最優先だが、長期戦を見据えて(自分が)戻ってくるのがミニシアター。育ってきて、スクリーンからいろいろな世界を見られたし、出会いもあった」とミニシアターがかけがえのないものだと強調。その上で「出来ることを模索したい。テレワークの状況で生み出せるエンタメがあるのでは? と個人的にトライしているが、クラウドファンディングが映画人が取るべきアクションだと思う」と語った。

ミニシアター・エイド基金は13日、日本国内最大のクラウドファンディングサービス「モーションギャラリー」に立ち上げられた。特典付きの「未来チケットコース」と、特典なして支援のみ行う「思いっきり応援コース」の2コースがある。支援者にリターンされる特典は、希望する映画館で22年まで使える未来チケットや、特別ストリーミング配信サイト「サンクス・シアター」で有志の映画人が提供したレア映画な映画を1年間、見る権利などが用意された。

クラウドファンディングの目標額は1億円で、会見終了後の午後5時42分に基金の公式ツイッターは「開始から5時間ほどで900万円に到達しました。心より感謝いたします」と報告した。