覚せい剤取締法違反(所持、使用)で16年9月に有罪判決を受けた俳優高知東生(55)が25日、日刊スポーツの取材に応じ、酒気帯び運転容疑で逮捕、釈放されたTOKIOの山口達也元メンバー(48)に向け、薬物からの回復を目指して自身が参加する自助グループへの参加を呼び掛けた。 高知は薬物もアルコールも依存という点では変わらないことや、経験や理解がある人とともに回復の道を歩むことが出来る環境作りの必要性を強調。「山口君と本当につながりたい。正しい方向に、どう歩いて行くか伝えたい」と訴えた。

高知の目に涙が浮かんだ。「人前で責任ある仕事をする人間がしくじる…反省では済まされない。でも自分を責めすぎ、どうしていいか分からないループにはまる」。山口元メンバーの心中を、おもんぱかった。

芸能人が罪を犯した場合、再就職したくても顔が知られていて難しかったり、引っ越ししたくても部屋を借りられないなど特有の困難があるという。それ以上にきつかったのは判決後、身辺整理などに追われた1年を経た、2年目だった。周囲から人は離れ、わずかな友人の支えに感謝しつつも「いたたまれなくなり、自分を失い」自殺も考えたが「死ぬ勇気も根性もなかった」と打ちひしがれた。

その中「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表にツイッターで繰り返し声をかけられ、自助グループに参加。著名人も複数おり治療、回復法と並行して著名人特有の問題の解決法も学んだ。何より「回復を経験した仲間に包まれ、安心して心をさらけ出せた」ことが大きかった。

高知は、山口元メンバーが18年、強制わいせつ事件をめぐりTOKIOを脱退した際、復帰を希望も一部から否定的な見解が出たことに言及。「山口君も理解できるからこそ、やってしまった責任を自分自身で抱えて苦しんだんだろう」と指摘。アルコールは日常的に販売され、薬物以上に入手しやすいだけに断つことは難しい。だからこそ「正しい明日からの1日の支えになりたい」と訴える。

「同じつらさ、苦しみを経験したから彼の内心の、人に言えない部分を受け止める準備は出来ている。安心して飛び込んで欲しい」。高知はただ、連絡を待ち続ける。【村上幸将】

○…高知は4日に著書「生き直す 私は一人ではない」(青志社)を出版した。父親が反社会勢力の人間で愛人だった母が自殺したこと、前妻の高島礼子との離婚、主治医の国立精神・神経医療研究センター松本俊彦薬物依存研究部部長の寄稿文をまとめた。5月にツイッター連続ドラマで俳優復帰し、依存症問題の啓発活動の傍ら、先輩の助力を受けライブも始めた。今月末で執行猶予期間満了を迎えるが「根性、精神論じゃ乗り越えられなかった。人生を生き直す権利があると言えるまで回復できたのは、僕以上に回復した人に導かれたから」と感謝した。