草なぎ剛(46)の、稲垣吾郎(47)への優しさを垣間見た。草なぎは11月29日、都内のTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画「ミッドナイトスワン」(内田英治監督)の舞台あいさつに登壇した。

「ミッドナイトスワン」は、内田監督(49)が脚本から作り上げたオリジナル作品。広島から上京し、新宿のニューハーフショークラブでステージに立っているトランスジェンダーの凪沙(草なぎ)が、母親の育児放棄にあった故郷の親戚の子一果(服部樹咲)を養育費目当てで預かる。一緒に生活する中で、社会の片隅で生きてきた凪沙と孤独の中で成長してきた一果の間に情が湧き、母性が芽生えた凪沙と一果の日々を描く。

9月25日に全国150館で公開後、口コミで評判が広がり、ロングラン上映が続き、興行収入(興収)は6億5000万円を超え、公開10週目ながら154館と公開規模が拡大。内田監督が書いた小説版も、累計発行部数が8万部を突破。音楽を担当した渋谷慶一郎氏(47)が手掛けたサウンドトラックの売れ行きも好調と、小説や漫画などの原作がないオリジナル作品としては、異例のヒットを続けている。そのことを受けての舞台あいさつだった。

草なぎは最後のあいさつを終えると映画のテーマソングが流れる中、モゴモゴと口を動かして

「#ばるぼらも公開中」

「#稲垣吾郎代表作」

と繰り返して降壇した。 舞台あいさつ9日前の同20日に、稲垣と二階堂ふみ(26)が主演し、漫画家・手塚治虫監督の漫画を実写化した映画「ばるぼら」(手塚真監督)が公開されたばかりだった。草なぎの稲垣への心遣いに、客席は沸いた。

「ばるぼら」も公開後、順調に動員を伸ばしている。R+15(15歳未満の入場、鑑賞禁止)のレイティングがつき、全国79の映画館で公開と公開規模は中規模だが、観客動員は3万人を突破。公開初週の興収ランキングでは全体11位、実写映画では4位の成績だった。18日からは台湾での上映も決定した。

もちろん「ばるぼら」の作品自体と、俳優陣の演技に力があったからこそ結果が出ているに違いない。ただ、草なぎの稲垣への思いあふれたアシストは、ツイッターをはじめとしたSNS上の口コミとして、少なからず後押しにはなっているはずだ。

草なぎは舞台あいさつの序盤に「僕も芸能生活していて、10週目に舞台あいさつはないと思う。館数も増えているというのが」と感激していた。きっと、稲垣の「ばるぼら」も同じようにヒットして欲しいと願っていたからこそ、降壇時に宣伝文句を口にしたのだろう。2人の作品が順調に興収を伸ばしたあかつきに、互いに並んで思いを語り合う舞台あいさつを取材したいと思う、今日この頃だ。【村上幸将】