新型コロナウイルスの感染拡大に世界中が揺れた2020年。日本でも4月には緊急事態宣言が発令され、外出自粛を余儀なくされたが、そうした状況でもネット上では“おうち時間”を楽しもうとするポジティブな企画やアイデアが多数登場した。そのうちのひとつ、シンガー・ソングライター星野源がSNSで発表した楽曲「うちで踊ろう」は、多くのファンや芸能人たちの間で反響を呼び、さらには政治家までも巻き込む大きなムーブメントとなった。

「うちで踊ろう」は星野が4月3日に自身のインスタグラムで公開したギター弾き語り動画で、外出できない状況でも「家の中で踊ろう」あるいは「心を踊らせよう」といった思いが込められた楽曲。星野が「誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな?」と呼びかけ、歌手の三浦大知がコラボ動画を公開して話題となった。

その後も、歌手で女優の中島美嘉、GLAYのHISASHIなどアーティストたちが歌や楽器演奏等で参加するばかりでなく、お笑いコンビのバナナマンや、俳優の大泉洋、ダイノジ大地洋輔、ガチャピン&ムックなど、各方面の人気者たちがそれぞれの持ち味を生かした楽しいコラボを披露。香取慎吾は、歌詞の世界観を得意の絵で表現した動画を公開し、ファンからは「慎吾アートと源さんコラボ最高に素晴らしすぎて感動 元気もらえた」「すごい、本当に香取くん絵やばい天才」「慎吾ちゃんらしいコラボの仕方が素敵だね」といった絶賛コメントが相次いだ。

コラボ動画でひときわ大きな話題となったのは、当時の首相、安倍晋三氏。楽曲に合わせて、カジュアルな服装の安倍氏が自宅ソファで愛犬のミニチュアダックスフントのロイを抱いたり、カップ片手に飲み物を口にしたり、本を読み、テレビのリモコンをいじるなどくつろぐ様子を見せ、「いつかまた、きっとみんなが集まって笑顔で語り合えるときがやってくる。その明日を生み出すために今日はうちで…。皆様のご協力をお願いします」と呼びかけた。

このコラボ動画は賛否を呼び、「星野源さんとのコラボ動画、素敵です」「総理もお身体ご自愛ください」といったコメントが寄せられる一方で、あまりに優雅にくつろぐ姿に「くつろいでいる場合じゃない人が日本にたくさんいますよ」と批判的な投稿が殺到。「何様のつもり!」がトレンドワード入りするなどネット上は大荒れとなったが、一方ではお笑い芸人などが安倍氏の動画を風刺したパロディー動画を公開するなど、笑いも生まれた。

2020年を象徴する一曲となった「うちで踊ろう」。原曲は1番のみだったが、大みそかの「第71回NHK紅白歌合戦」(午後7時30分)では未発表の2番を追加した特別版「うちで踊ろう(大晦日)」が披露される。