日刊スポーツでは「モ~進2021」と題し、今年の活躍が期待されるアスリートや芸能人を紹介する。

丑(うし)年はこの俳優に注目だ! 北海道出身の俳優坂東龍汰(23)が年男の2021年、さらなる飛躍を目指す。昨年は黒沢清監督(63)がベネチア映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞した「スパイの妻」など話題作に多数出演。新年も7日にMBSなどで放送開始のドラマ「夢中さ、きみに。」(TVerなどでも配信)などが控える。【取材・構成=浅水友輝】

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役者道、まっしぐら。俳優坂東は挑戦を続ける。

坂東 役者を一番に力を入れて今後も成長したい。歌や絵だったりいろいろなこと、興味あるものはどんどん果敢にトライしたい。それがいつか演技や芝居に生きてくると信じている。

昨年はコロナ禍でも出演した映画5本、ドラマ3本が公開。人気漫画が原作の映画「弱虫ペダル」(三木康一郎監督)で自転車に青春を懸ける熱血高校生になりきれば、映画「スパイの妻」では国家機密を知ることで人生が一変する青年を好演。「充実した1年だった」。蒼井優、高橋一生と共演した「スパイ-」では堂々とした演技ぶりに、黒沢監督をして「将来大物になる器」と称された。

4000円。高校卒業後に北海道を旅立つとき、通帳に入っていた金額だ。上京資金を稼ぐため「住み込みバイトと検索してぽちっと押した」。兵庫県内の旅館で働く仲居の仕事を気軽に選んだが「めちゃくちゃしごかれた。お客さんにため口とか使っていたので敬語からたたき込まれた」。

3歳から個性、自主性を尊重する独自の15年一貫教育のシュタイナー教育を受けて育った。テレビや携帯電話は禁止されたが、演劇や音楽などを学び、高校3年間は映画研究部で映像作品を制作した。一方で“世間”の従来の価値観とは違った環境で育ち「生活にどのくらいお金がかかるとか分からなかった。今は経験が全て生かされている」。

「芸能界にも無知。さんまさんもダウンタウンさんも知らなかった」。旅館で半年間勤めた後の1度目の上京は2カ月で挫折。同時期から邦画を見ては印象に残った俳優の所属事務所を調べて、履歴書を書いた。再び兵庫で資金をためて、別校舎で同じ教育を受けた俳優村上虹郎(23)に相談したことで、現事務所への所属が決まった。

17年8月にデビューすると1つの作品を作る熱量に圧倒された。共演者の演技に学び、台本も多角的に読み込むようになった。「考えるのは現場に入る前まで。たくさん練っていれば、自然と体の中に流れて表現につながる。一番信じているのは感じたことをありのままに出すこと」。感性を貫くスタイルはぶれない。

素顔は「根アカな」23歳。番組宣伝でバラエティー番組に出演したときも「抑えようとしてたけど、楽しくてはしゃいでしまった」。どこまでも「興味津々な性格」は変わらない。やりたいことはたくさんある。

坂東 撮影で北海道はまだ1回もない。ロケ地として今どきの言葉で言えばすごく映える。撮りたいですね、主演で1本。俳優として北海道に戻ってきたい。

◆坂東龍汰(ばんどう・りょうた)1997年(平9)5月24日生まれ、北海道出身。3歳から高校卒業までシュタイナー教育を受ける。17年からオダギリジョーらが在籍する鈍牛倶楽部に所属。18年6月に「EVEN~君に贈る歌~」で映画初出演。同映画の劇中バンド「EVEN」のギターとして「アイノウタ」でメジャーデビュー。趣味は社交ダンス、ギター、バイオリン、クレイアニメ制作など。175センチ、58キロ。