宝塚歌劇団出身の元星組トップで女優の紅(くれない)ゆずるが22日、大阪市内のホテルで、退団後初主演舞台「アンタッチャブル・ビューティー~浪花探偵狂騒曲~」(大阪松竹座、4月16~26日)の取材会を行った。

19年秋に退団した紅は、大阪で生まれ育った生粋の“大阪人”。地元の大阪松竹座で、退団後初主演舞台に臨むことになり「素直にうれしい」。宝塚時代は、テンポ良いトーク、タイミングの速い切り返し話術で、コメディー・センスを発揮していたが、今作では、吉本新喜劇元座長の内場勝則(60)、松竹新喜劇出身の江口直弥(72)ら、大阪を代表する喜劇人と共演する。

「私は美しく華やかな宝塚の中で、少しおもしろいことをするから、笑ってもらえた。でも、大先輩方を前に『私、笑わせます』ぐらい言わないとダメ。(喜劇の大先輩から)学ぶというより盗む気持ちで」

新たな世界で、新たな立ち位置で、女優として舞台に立つ今の決意を示した。

物語の舞台は大阪・ミナミ、下町のシャッター商店街。ダンスや演技経験もある探偵志願の主人公・本間カナにふんし、劇中、歌って踊る場面もある。昨年9月の上演予定が、コロナ禍で延期され、今回、あらためての上演が決まった。

セリフは「宝塚時代は1度だけあった」と振り返る大阪弁。「宝塚時代は役をいただくと、1回大阪弁に直して、標準語に戻して、男役で演じていた」そうで、3段階を経ていたものが、今回は、紅自身の素と同じ言葉でしゃべる。

大阪人気質には「とても苦しく、つらかったりしても、皆が互いにお尻をたたき合うというか、なんとか明るい方向に持って行こうとする気質がある」と、実感しており、大阪松竹座のある道頓堀で上演する喜劇への思い入れは強い。

「今、当たり前が当たり前でなくなって、(自粛中は)会食も遊びに行くことも、すべて絶たれてしまった。当然が当然ではなくなりましたが、今この時期に『本当に来てよかった』と思える作品に仕上げます」

ベテラン喜劇役者とともに臨む人情喜劇。その主演に立ち、自信と決意もこめて語った。

この日、会見に同席した三田村邦彦(67)は「笑える部分と、ほろりとするところで、しっかりほろりとしていただけるためには、役者の技量が必要」と気を引き締めていた。