SEKAI NO OWARIのFukase(35)が、11日公開の映画「キャラクター」(永井聡監督)で俳優初挑戦している。

正体不明の連続殺人犯という難役だが、これが初めてとは思えない好演だ。真意を読ませない遠くを見るような目、刃物を手にしたときの俊敏な動き…緩急の効いた表情や動作にヒリヒリする迫力がある。

映画は、浦沢直樹作品でストーリー共同制作者を務めてきた長崎尚志さんが10年がかりで練り上げたオリジナル企画だ。

菅田将暉(28)演じる売れない漫画家は、ひょんなことから一家4人が犠牲になった殺人現場を目撃してしまう。その衝撃体験に突き動かされるように書き始めた作品は人気を呼び、コミック誌の目玉連載となっていく。ところが、今度はコミックの内容をなぞるような殺人事件が起きて…。

作家(菅田)と殺人鬼(Fukase)の奇妙な「共振関係」が見どころになっているわけだが、バチバチの共演シーンでもFukaseは菅田に負けないオーラを放っている。周囲も小栗旬、中村獅童…と巧者ぞろいだが、彼らに負けない存在感で作品を引っ張っている印象だ。

Fukaseは作品資料に「オファーを頂いた時は正直とても悩みました。果たして自分に務まるのか、ご迷惑をかけてしまうのではないかと。しかし、1年間以上かけて準備することができたので、撮影では程よい緊張感の中で非常に楽しく過ごさせていただいてクランクアップを迎えた時には涙があふれそうになりました」とコメントを寄せている。

そもそもの話になるが、Fukaseは10代の頃にADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されたことを公表している。つらい体験が重なり、絶望した時、残されていたのが音楽とそれを共にする仲間だけだったことから、「世界の終わり」から始めてみようというポジティブな思いをバンド名に込めたそうだ。その「セカオワ」もメジャーデビューから10周年。今回の演技には、かつて「世界の終わり」を見たFukaseならではの体験が反映されているのかもしれない。【相原斎】