歌手で俳優の中村雅俊(70)が、デビュー48年目で初めて全編フルオーケストラと共演する全国4都市ツアー「ビルボードクラシックス 中村雅俊 Symphonic Live 2021」に挑む。8月28日の兵庫・西宮からスタートし、名古屋、熊本、東京で「ふれあい」「俺たちの旅」「恋人も濡れる街角」などのヒット曲を壮大な演奏をバックに熱唱する。新たな挑戦への意気込み、今までの足跡について聞いてみた。

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1974年(昭49)4月、慶大卒業と同時に日本テレビ系「われら青春!」でラグビー部顧問の新米教師・沖田俊役で主演デビュー。同年7月に主題歌の「ふれあい」で歌手デビューして120万枚超の大ヒット。“歌う青春スター”中村雅俊が誕生した。

「日本テレビの青春シリーズの先生役は俺が5代目。それまで知らなかったんだけど、先生役の俳優は必ず歌を出すって決まっていたんです。音楽はいずみたくさんで、プロデューサーは『太陽にほえろ!』も手掛けていた日本テレビの岡田普吉さん。4月からドラマが始まって、しばらくしたら岡田さんが『じゃあ、雅俊。レコード出そうか』って。『え、なんで?』みたいな感じだったんですけど、先生役がレコード出すのは決定事項だった。だから、俺の前の主役だった村野武範さんや竜雷太さんもレコードを出していました」

74年7月1日に発売された「ふれあい」は「われら青春!」の挿入歌。発売前日の同年6月30日には「ふれあい」をテーマにした第13話が放送されていた。

「曲のレコーディングをして、その内容に合わせて1話分作ったんです。与えられた曲が「ふれあい」。とにかく、レコードを出すなんて夢みたいな話じゃないですか。それで、すごくうれしくてね。コロムビアレコードだったんですけど、あの頃は同じような若手の役者がたくさんいて、それぞれレコード出していたんです。だから、あまり期待されていなかったんじゃないかな。見るとわかるんですけど、レコードジャケットがドラマのスチール写真なんですよ。撮影風景をスチールマンが撮った写真が、ジャケットになっているんですよ」

慶大3年の時に文学座付属演劇研究所に入り、俳優を目指していた中村だが、音楽も大好きだった。ギターを弾きながら、自作の曲を友人の前で披露することもあった。

「大学の時にバンドとかじゃなくて、ギターを弾いて曲を作っていたんですよ。なんか自分の作った曲がレコードになったらいいな程度に、趣味でギターを弾いていました。曲を作って、クラブの仲間の前で『今日、曲作ったから』って歌って聞かせるみたいな感じでした」

ジーパンに下駄、ギターを弾きながら中村が歌う「ふれあい」は発売翌月に火がつきオリコンヒットチャート1位を獲得した。

「『ふれあい』を出す時に、ギターを弾きながら歌おうって決めてました。今みたいにスタイリストっていない時代だから、普段着で出たんですよ。だから下駄はいて、ジーパン履いて、全て自前。実際、異質ではあったと思うんだけど、大学にも下駄を履いて行っていました。それが良いか悪いかわからないんだけど、目立つ出方になったみたいで。自分の人生の中では、俳優デビューして、歌手デビューも出来たっていうのがすごいことですよね。今思うと、あの道があるかないかで、自分の人生って、潤い方が全然違っていたんじゃないかな」

俳優、歌手の“二刀流”。今月5、6日にはビルボードライブ横浜、同14、15日にはビルボードライブ大阪で公演「DAWN」も開催する。【小谷野俊哉】

(続く)

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◆中村雅俊(なかむら・まさとし)1951年(昭26)2月1日、宮城県女川町生まれ。73年慶大在学中文学座付属演劇研究所入所。74年4月の日テレの連ドラ「われら青春!」で主演に抜てきされデビュー。同7月に挿入歌「ふれあい」で歌手デビュー、120万枚超の大ヒット。75年同局「俺たちの勲章」「俺たちの旅」、映画「ふれあい」。歌手としてシングル55枚、アルバム41枚をリリース。182センチ。血液型O。

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◆「billboard classics 中村雅俊 Symponic Live 2021~Before DAWN~」◆

▼8月28日午後5時 西宮・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 大阪交響楽団

▼9月3日午後6時30分 名古屋・愛知県芸術劇場コンサートホール 大阪交響楽団

▼9月26日午後5時 熊本・熊本城ホールメインホール 九州交響楽団

▼9月30日午後6時30分 東京・Bunkamuraオーチャードホール 新日本フィルハーモニー交響楽団。

いずれも指揮は円光寺雅彦、サポートミュージシャンは大塚修司。