俳優阿部サダヲ(51)長澤まさみ(34)が、野田秀樹(65)作・演出のNODA・MAP公演「THE BEE」(11月1日~12月12日、東京芸術劇場シアターイースト、12月16~26日、大阪ナレッジシアター)に出演することが5日、分かった。

世界14都市で上演された作品で、長澤はNODA・MAP初参加。ほか河内大和、川平慈英が出演。東京、大阪で計63公演。

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「THE BEE」は、脱獄犯に妻子を人質に取られた平凡なサラリーマンの反撃が、思わぬ方向に展開していく物語。野田が米中枢同時テロ、イラク戦争に見た報復、暴力の連鎖を投影した作品。10カ国14都市で上演され、日本公演は約9年ぶりとなる。

野田は同作の全公演に俳優として出演してきたが、今回は演出に専念する。何度も演じたサラリーマン井戸役の後継者に決めたのが阿部だった。阿部は9年前、長野県松本市まで行き公演を見て衝撃を受けた。「作品を見て、すごくカッコ良くて、『この役いつかやりたい!』と思いながら、劇場を出たことを覚えています。まさかこんなに早く実現するとは…」とコメント、初演時の野田と自分が同じ年であることにも感慨を持っている。

脱獄犯の妻とリポーターを演じる長澤は、念願のNODA・MAPで、すでにワークショップにも参加、「この日が来るのをずっと楽しみにしていました。ワークショップの時に、野田さんは一緒に考えてくれる『一員』でもあることが印象的でした。長く大切にされているこの戯曲を今の私自身の力を振り絞って演じたい」と話している。野田も、長澤が10代のころから舞台や映画での活躍を見てきたそうで、ようやく両者の思いが合致した。

百々山警部などを演じる河内は、「エッグ」「MIWA」などの野田作品で存在感を見せてきた。「今回の抜てきは夢のよう。丸ごとぶつかっていきます!」と話し、NODA・MAP公演連続出演で脱獄犯など4役を演じる川平は「この4人で尋常じゃない、スパークする、『これが演劇だ!』というものをお届けいたします!」とコメントを寄せた。

関係者によると野田は、演劇の力を見てもらいたいと熱望しているそうで、直筆コメントも解禁した。

◆「THE BEE」 平凡なサラリーマン井戸が帰宅したわが家で見たのは、大勢の警察とマスコミ。脱獄囚の小古呂が井戸の妻子を人質にとって立てこもっていた。井戸は妻子を救出するため警察と行動を起こすが、事態は思わぬ展開へ-。野田が英国で、現地の俳優たちと行ったワークショップから誕生した。筒井康隆氏の短編小説「毟りあい」が原作。06年のロンドン初演は全編英語。07年日本に上陸し、英語版、日本語版が同時上演され演劇賞総なめ。