18日に札幌市のホテルで35歳の若さで急逝した女優神田沙也加さんが主演していたミュージカル「マイ・フェア・レディ」が25日、山形市・やまぎん県民ホールで公演再開した。

観客総立ちの3回目のカーテンコールの中、沙也加さんとダブルキャストで主役イライザを演じてきた朝夏まなと(37)が「今日、公演を再開することができました」とあいさつ。続けて「とても悲しく、とてもさみしいです。でも私たちは、伝統ある、愛してやまないこの作品を、守り、続けていきたいと心から思いました。さぁちゃんの思いも一緒に、大千秋楽まで、1回1回大切につとめてまいりたいと思います」と涙ながらに語った。

計4回のカーテンコールで10分近く拍手が鳴りやまなかった。朝夏、別所哲也(56)は感極まった様子で観客に投げキスを送った。

メイン3役はダブルキャストで組まれていたが、今後の公演はすべて、朝夏、別所、寺西拓人(26)の「チームA」が出演する。沙也加さんと「チームK」として出演していた寺脇康文(59)前山剛久(30)は降板。静岡、愛知、大阪と続き、来年1月28日の博多座で大千秋楽を迎える。

この日の公演前、プロデューサーからあいさつがあった。劇場が変わる最初の公演恒例で「今日は(山形公演)初日です。頑張りましょう」との言葉に、出演者も拍手と歓声で応えたという。関係者は「沙也加さんについてはそれぞれ思うことがあるでしょうが、みんな普段通りでした」とした。沙也加さんへの思いは胸にしまい、公演の完走を誓った。残り公演すべて中止になる可能性もあったが、キャストが一致団結して続行が決まったという。

沙也加さんの「マイ・フェア-」での思い出はあまりにも多い。前山は22日、沙也加さんと「真剣なお付き合い」をしていたと追悼コメントを発表した。イライザは、沙也加さんが「第2のママ」と慕い尊敬していた大地真央(65)が20年にわたって演じた。インスタにもイライザの写真を多数アップした。作品の世界観も大好きだった。心から愛した作品の公演再開、天国の沙也加さんに届いただろうか。【小林千穂】

○…ホール入り口には、21日の公演再開発表時に東宝ホームページに掲載された、再開のお知らせ、朝夏、別所のメッセージが掲示された。プログラムやポスターは、これまでの公演と変わっておらず、沙也加さんと朝夏2人のポスターが観客を出迎えた。この日は雪が時折強く降る天候だったが、開場の2時間ほど前から人が集まりはじめ、開演45分前の開場と同時に、プログラムを求める人が列をつくった。

◆「マイ・フェア・レディ」をめぐる経緯

▼11月14日 東京・帝国劇場で開幕。

▼12月18日 札幌公演2日目。沙也加さんの出演予定公演を朝夏まなとが代演。

▼同19日 沙也加さんの急逝を受け、制作の東宝が札幌での20日までの公演中止を発表。

▼同21日 東宝は、山形公演からの再開と、今後は朝夏、別所哲也、寺西拓人の「チームA」がすべて出演すると発表。

▼同22日 沙也加さんと共演の前山剛久が真剣交際していたことを明かす。

◆ミュージカル「マイ・フェア・レディ」 下町の花売り娘イライザが、ヒギンズ教授の手ほどきでレディーになる物語。56年にブロードウェーで初演され、64年にオードリー・ヘプバーン主演で映画化された。日本初演は63年。初代イライザは江利チエミさん。その後、雪村いづみや栗原小巻らが演じ、大地真央は6代目として90年に引き継ぎ20年間、615回演じた。沙也加さんと朝夏まなとのダブルキャストでの公演は18年に続き今回で2度目。

 

 

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