09年に亡くなった祖母藤間紫さんの名跡を継ぎ、21年2月に紫派藤間流家元を襲名した3代目藤間紫(27=藤間爽子)が30日、東京・国立劇場大劇場で、「三代目藤間紫襲名披露・紫派藤間流舞踊会」を開いた。

1部の最後に1人で女形の最高峰と言われる「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」を踊った3代目藤間紫は、2部の最後に初代藤間翔(かける)を襲名した兄の貴彦(30)と「道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」を踊った。踊り終え「先ほど襲名披露舞踊会が終わりました。第1部で『京鹿子娘道成寺』、第2部では『道行初音旅』を兄・翔と共に演じました。どちらの演目も古典舞踊の大曲で、無事に踊れた喜びと安堵、そして古典演目の難しさ厳しさを痛感しました」と心境を語った。

「道行初音旅」は、静御前が佐藤忠信を伴い、慕っている源義経が逃れた吉野に差しかかる物語。静御前を演じた3代目藤間紫は、白を基調にした着物を身にまとい、舞台の中央で盾と剣を手にしなやかに舞った。そして、弟子が持ち込んだ鼓を繰り返し打ち鳴らすと、佐藤忠信を演じる翔が通路に現れた。

佐藤忠信は正体が狐という役どころだけに、翔は頭に白い耳状の飾りを着けて通路に姿を見せた。そして大きな動きから力強く足を踏みならすなど、男性らしいダイナミックな踊りを披露した。

2人は物語上、主従の関係だが、時に手に手を取るように踊り、最後は2人で舞台中央で決めた。3代目藤間紫は「このようなコロナ禍の中、たくさんの方々のお力添えを頂き、お弟子さん方と喜びをご一緒できましたことは、本当に幸せです。これから益々精進致します。どうぞよろしくお願い致します」とコメントした。