先月27日に米ロサンゼルスで開催された第94回アカデミー賞授賞式で起きた俳優ウィル・スミス(53)のビンタ騒動について、1日にABCテレビで放送された授賞式のプロデューサーの独占インタビューが波紋を広げている。今年の授賞式のプロデューサーを務めたウィル・パッカー氏は、グッドモーニング・アメリカのインタビューに応じ、スミスがコメディアンのクリス・ロックに平手打ちした後も退場させられなかったことが批判されていることについて、「ロックがそれを望んでいなかったから」とコメント。「この状況をこれ以上、悪化させることはしたくない」とロックが話しているとアカデミーのリーダーを説得し、スミスの退場を思いとどまらせたと話した。しかし、実際に舞台裏で何が起きていたのか複数のメディアが関係者に取材した内容とパッカー氏の主張には大きな食い違いがあり、真実を話していない可能性が指摘されるなどさらなる批判を浴びる結果となった。

芸能情報サイトTMZは、ロックの関係者の話としてロサンゼルス市警察に対してスミスの逮捕は望んでいないと話したものの、退場の有無に関しては発言していないと反論。デッドラインも同様にロックはパッカー氏からスミスの退場について話は聞いていないと伝えている。また、パッカー氏はインタビューでアカデミーはスミスを会場から追い出そうとしていたと語り、主催する米映画芸術科学アカデミーもスミスに退場を求めたものの拒否されたと発表しているが、この点に関してもバラエティー誌が「スミスは公式に退場を求められてはいない」と匿名の関係者の証言を伝えており、「アカデミーはうそをついている」と報じた。

そんな中、騒動の当事者であるロックに自身のスキンヘッドをジョークのネタにされたスミスの妻で女優のジェイダ・ピンケット・スミスが、夫の平手打ち直後にロックのリアクションを見て笑っている様子を撮影した動画も拡散され、話題になっている。スミスにビンタされたロックが「ウィル・スミスに殴られたよ」とその場を取り繕って会場の笑いを取る場面から始まる動画は、夫妻の後ろ席に座っていた人物が撮影したと思われるもので、「テレビ史に残る最高の夜だ」とロックが語る場面では肩を揺らしてクスクスと笑っていることが分かる。これを見た人たちからは、本人はロックのジョークを気にしていなかったのではといった意見が出ている他、夫がキャリアを失うかもしれない行為をなぜ止めなかったのかと批判する声も出ている。

米映画芸術科学アカデミーの会員を辞任することを発表したスミスは、声明でロックに対して謝罪の言葉を述べているものの、事件後1度も2人は直接会話をしていないとCNNは伝えており、まだ直接の謝罪がないロックはこの件に関して「今はまだ起きたことを処理しているところ」と語るにとどまっている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)