俳優渡辺裕之さんが今月3日、神奈川県内の自宅で亡くなっていたことが5日、分かった。66歳だった。関係者によると、自宅の地下にあるトレーニングルームで倒れていたという。

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渡辺さんの突然の訃報に、無名時代からかわいがられ「師匠」と慕っていたワハハ本舗のお笑い音楽ユニット、ポカスカジャンの大久保ノブオ(55)とタマ伸也(53)は、日刊スポーツの取材に応じて悲嘆に暮れた。

出会いは1999年のフジテレビ系ドラマ「ツインズな探偵」の撮影だった。ワハハ本舗の先輩である久本雅美(63)が主演のドラマで、2人は19年に脱退した中山省吾(51)と共に楽団員役で出演した。大久保独自の楽器である手作りの「バケツドラム」に注目したのが、ジャズドラマーでもある共演の渡辺さんだった。

大久保は「『お前、ドラマーなのか』と聞かれて、お昼の休憩の時にお箸をスティック代わりに『ドラムは、こうたたくんだ』って教えてくれました。当時は段ボールを使ってバケツドラムを作っていましたが『こうすれば大きな音が出るよ』ってウオッシュボード(洗濯板)を使うことを提案してくれました」と振り返った。

「その後に新宿のシアターサンモールで、初めて単独ライブをやった時にゲストで出てドラムをたたいてくれました。渡辺さんがジャズドラマーとして(トランペッターの)日野皓正さんとライブをやる時には頼まれて、丸1日付き人もやらせていただきました」と話した。

タマは「結成して3年くらいで、僕らが全く無名の時に業界で初めて声をかけてくれて、目をかけていただきました。金がない頃は服とかバッグもいただいて、緑色のバッグは15年くらい愛用させてもらいました」。

渡辺さんの自宅に呼ばれて、夫人の女優原日出子、娘の3人を前にライブをしたこともある。タマは「師匠のワインセラーから値段の高い順に飲んでいって怒られたこともありました」。大久保も「久本さんに『あいつら高いワイン飲みやがって』って笑いながらぼやいていたそうです」。

その後もポカスカジャンがライブを開く度に、渡辺さんは顔を出してドラムをたたいてくれたという。日本テレビ「ものまねバトル」でビートルズのものまねをする時には、渡辺さんがポカスカジャンのメンバーに加わった。タマは「3人組で1人足りなかったので『師匠、お願いします』って言ったら、ひとつ返事でリンゴ・スター役を引き受けてドラムをたたいてくれました」と感謝した。

渡辺さんの最期の場所となったトレーニングルームも、よく見せてもらった。大久保は「あそこで亡くなったとは信じたくない。とにかくお世話になりました。大好きです。ご冥福をお祈り申し上げます」。タマは「出会った頃は、まだ40代前半で、すごいマシンがたくさんありました。本当にお世話になりました」と声を詰まらせた。【小谷野俊哉】

◆ポカスカジャン 劇団ワハハ本舗所属のお笑い音楽ユニット。96年結成。大久保ノブオは(55)はボーカル&バケツドラム、ハープ。タマ伸也(53)はボーカル&ギター。19年6月に中山省吾(51)が脱退。

 

 

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