お笑いトリオ、ダチョウ倶楽部の上島竜兵(うえしま・りゅうへい)さん(本名龍平=りゅうへい)さんが死去したことが11日、分かった。61歳。

所属事務所によると、11日未明に都内の自宅で倒れているところを家族が発見。病院へ搬送されたが死亡が確認された。警視庁捜査関係者によると、自殺を図ったとみられる。葬儀はコロナ禍の状況を鑑み、密葬で執り行う。

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「先輩にも後輩にも甘え上手で根っからの子分肌」。若いころから多数の共演経験のあるガダルカナル・タカは上島さんのことをこう評した。先輩にかわいがられるのはもちろんのこと、気が付くと後輩にも相談しているような人だった。

日刊スポーツの取材には、事務所の後輩、有吉弘行、土田晃之らが活躍することについて「有吉(弘行)は子猫かと思ったら虎だし、土田(晃之)は子犬かと思ったらドーベルマンだった。僕らが何かを教えたわけではないし、もともと才能があったんです。逆に後輩に育てられた方かもしれない」と、謙虚に語った。

「キレ芸」が売りだが、素顔は優しく真面目。見ている側には伝わっていたような気がする。93年、後に妻となる女性との交際が発覚すると、「みんなでワイワイ、隠れずに付き合ってます。相談にのったり、相談にのってもらったり。素直でいい子です」と正々堂々と語り、目を潤ませた。お笑い芸人としては真面目すぎるほどの会見だった。

07年、「わらしべ夫婦双六(すごろく)旅」で舞台初出演したが、演出のラサール石井からのオファーにも最初は「舞台はコントしか経験がないのでできません」と断ったという。青年座研究所、テアトル・エコー付属養成所に在籍していたこともあり、舞台出演はうれしかったはずだが、ガツガツしてもいなかった。

実は真面目、という素顔が知られれば知られるほど、普通ならあまり芸で笑えなくなってしまうのだが、上島さんはいつも振り切れていた。報道陣しかいない取材現場でも「聞いてないよ~」などのギャグをどんどんと繰り出し、徹底的に笑わせてくれた。イジられ、大オチをかます上島さんを見て、現場はいつも爆笑だった。上島さんの素顔? そんなものを感じる暇もなく、あっという間に笑いが渦巻いた。

上島さんは、09年に著著「人生他力本願 誰かに頼りながら生きる49の方法」を出版した。14歳を対象にした内容で、上島さんは「完璧じゃなくていい」「気張らずまじめにやってりゃ何とかなる」と、若い世代に伝えている。しかし、他力本願でいられなかったのも上島さんだったのかもしれない。実は…の表情をいろいろ持っている人だった。【小林千穂】

 

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