梅雨空が、行ったり来たりの今年の夏。いよいよ本格的に暑い季節がやってきた。そんな酷暑対策にお薦めの人物が「アイス研究家」のシズリーナ荒井(37)だ。5000億円超と言われる日本のアイス市場に迫り、バラエティーや情報番組に引っ張りダコの正体不明の男…その実像に迫ってみた。【小谷野俊哉】

色白、くっきり目鼻立ちに黒縁メガネ。口調はあくまでも丁寧なオネエキャラ風。アイス研究家として、ちょいちょいテレビ番組に顔を出すようになったシズリーナ。元々は本名の荒井健治として活動していたが、浅草キッドの玉袋筋太郎(55)から「シズリーナ」の尊称? を賜った。

「2年前に玉袋筋太郎さんがパーソナリティーを務めるTBSラジオ『金曜たまむすび』に出させていた時に『アイスの話を聞いてると、アイス食べたくなるよね。しずる感あるよね』って。で、しずるはコンビのお笑い芸人がいるから、シズリーナでいいんじゃないということに(笑い)」

アイスクリームに本格的に興味を持ち始めたのは高校2年の時だった。

「実家の冷凍庫を開けて、アイスを手に取った時に、ふと疑問にぶち当たったんです。隣には冷凍ギョーザ、冷凍うどん、冷凍ハンバーグとか冷凍食品がある中で、なぜアイスは、そのまま疑いもせずに食べてるんだろうと。アイスだって冷凍食品じゃないかと思って、じゃあアイスはどうやって調理をしたら、手を加えたら、おいしく食べられるのかと考え始めた」

一昨年7月7日に放送されたTBS「マツコの知らない世界」では「アイスはカチカチ派」のマツコ・デラックス(49)に自分の好きな「溶け始めてドロドロになる寸前の」アイスクリームを薦めて、ネットで炎上した(笑い)。

「生まれてから累計で、5万5000個のアイスを食べています。来月38歳になりますから『アイス食べる歴』は37年弱。1歳1カ月から離乳食とともに食べてます」

高校2年から大学3年までは、お笑い芸人として活動した。大学卒業後は大手芸能プロに就職して、13年に独立。17年からは、念願の「アイス研究家」を名乗る。

「最初は『汚(お)ブス研究家』でした(笑い)。女子会プロデュースとか、テレビ番組の制作にかかわっていました。高校2年の時に『アイスになりたい』って思ってから、15年以上の思いがかなっているのがうれしいですね」

アイス研究家としての自身の役目は新製品を紹介することではなく、食べ方の紹介、そして背景を深掘りすることだという。

「私の場合はアイスの食べ方を研究している。あとは人気の定番商品のアイスが、なぜロングセラーになったのか深掘りしています。森永製菓の『チョコモナカジャンボ』は、今年で50周年になるんです。マツコ・デラックスさんや中居正広さん、木村拓哉さんと同い年なんですよ、このジャンボは。ちなみに、日本で一番売れてるアイスなんです。売れてる理由は、お菓子とアイスの融合。アイスって冷凍庫で保管していると、水分がモナカに浸透してしまう問題があったんです。でもお菓子メーカーとしてのプライド(技術)もあるので、アイスの水分を移行させない努力をしていて、いつ食べてもモナカがパリッとして、中のチョコも食感はあるのに口溶けがいいのも特徴の1つです。0・16秒に1個売れているんです」

アイスクリーム=AKB48説を唱えている。

「アイスクリームって、AKB48と似ているなと思っているんです。AKBのメンバーは、所属事務所がそれぞれ違うのに、同じ番組に出ているじゃないですか。アイスもいろんなメーカーがあってうん、みんな同じケースに入って並べられている。私も秋元康先生に憧れているので、アイスクリームをプロデュースして行けたら(笑い)」

例えば、アイスクリームの異業種とのコラボ。

「同業他社ではなく、例えば日清食品さんの『カップヌードルカレー』とロッテさんの『雪見だいふく』を掛け合わせて『雪見カレーヌードル』っていうの作ったんですよ。これね。めちゃくちゃおいしいんですよ。カップヌードルカレーに雪見だいふくを入れてお湯を少なめに注いで、3分待ってから、よくかき混ぜるとめちゃくちゃおいしい」。今の時期なら「コンビニ冷やし中華」に、明治「エッセルスーパーカップ超バニラ」を入れるのもお薦めだという。

コロナ禍では、箱入りのファミリーパックのアイスクリームが売れた。

「アイスは夏場にしか売れないと思われていたんですけど、通年売れるっていうことがわかりました。箱に複数本入ったファミリーパック、通称マルチパックがめちゃくちゃ売れて、新商品が投入されるようになりました」

将来的には、アイス研究家として築いた各メーカーとのつながりを生かして、ジャンルを広げるのが夢だ。

「私の経営している会社は、基本はリサーチ会社。テレビ以外にもリサーチ資料を提案して企画にしていくのが目的です。アイスに関しては、企画に深く関わってお金をもらっちゃうと弊害が出てくるんですよ。ランキング形式で紹介をする時に、メーカーからお金をいただいたら、それを1位にしなきゃいけないとか変な人間の欲が出てきちゃう。なので、そこは一切、お金を受け取らずに正当にジャッジをして企画にします」

アイスを評価するときに、絶対使わない言葉が「まずい」だ。

「おいしかったら『おいしい』って言うんですけどね。でも、アイスって基本はおいしいものだと思うんです。だから、評価として、うまいはうまいと。自分にはまらなかったのは『無言』で。でも、インスタグラムで、そういう評価をすると興味を呼ぶらしく、かえって一瞬で売れちゃったりもする(笑い)」

暑い夏に熱い思いで、アイスについて熱く語り続ける、オネエキャラ風の謎な男。それがシズリーナ荒井だ。

◆シズリーナ荒井(あらい) 1984年(昭59)8月2日、東京都練馬区生まれ。本名荒井健治。東京芸大卒。07年に大手芸能事務所に就職。13年に独立して「株式会社スリースマイル」を設立して「汚ブス研究家」を名乗る。14年「女子会のお作法『汚ブス』にならないための39か条」出版。15年「汚ブスの呪縛」出版。17年に「アイス研究家」としてデビュー。21年「コンビニ&スーパーのアイスが極上スイーツに!魔法のアイスレシピ」出版。趣味はアイス研究、散歩、温度計測。既婚。169センチ、90キロ。血液型O。