22年4月の村田諒太－ゲンナジー・ゴロフキン戦、同6月の井上尚弥－ノニト・ドネア戦などビッグマッチでリングガールを務め、一躍注目を浴びたタレント天野麻菜（31）。ボクシング知識ゼロから始めたリングガールも、5年目を迎えた。
熱戦を間近に見つめる天野が語る「リングガールのお仕事」とは。【遠藤尚子】
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18年からリングガールを始め、現在も月1回のペースで後楽園ホールに立つ。これまで50試合近くのリングガールを務め、世界戦の経験も豊富だ。ボクシングファンにはすっかりおなじみの顔となったが、実は「リングガールは一度お断りしたんです」と明かす。
当時のマネジャーに熱心に説得されて飛び込むも、ボクシングどころかスポーツ全般に疎かった。
「細かいルールも分からないまま、この人たちはどこの階級なんだろうと思って見ていました」と苦笑する。しかし、場数を踏むと次第に心境が変化した。
「『この間勝った選手が、また戦ってる。あ、防衛成功したんだ』と。選手のことを覚えるようになったり、自分なりに勉強したり。選手それぞれ戦うスタイルも違う。ボクシングってこうやって楽しむんだ！と分かりました」
試合のインターバルにボードを掲げてリング上を1周することは、仕事の一部に過ぎないという。写真撮影時の選手誘導やトロフィー授与、スポンサー対応などエスコート業務が重要で「ボードを持って回るだけでしょう？ くらいの知識で入ったので、最初に『試合が終わった選手のアフターケアや補助が目的だよ』と言われて。知らない世界でした」と振り返る。
ゴングが鳴った後の1分間、時間ぴったりにリングを周回することは職人芸に近い。今やすっかり体にたたき込まれた感覚だが、自身の“デビュー戦”では「緊張でめちゃくちゃ早く戻ってしまって、席についてもまだ試合が始まらない（笑い）。世界戦になると緊張感が違いますし、会場が違うとリングのストロークもスタンバイの位置も違う。そのペースをつかむのが大変でした」。昨年11月の寺地拳四朗－京口紘人戦では、カメラ位置の都合などで直前に回り方の変更があったが「丸4年やっていてよかったと思うのは、『どんなハプニングが来ても大丈夫』という自信がついていたこと。テンパることもなく、無事に回れました」と笑みを浮かべた。
試合の一部を背負うリングガールとして、責任感もある。会場は全方位の観客から見られる環境だけに「背もたれには一切持たれないですし、試合中はお水も飲まない。メーク直しやスマホを見ることも絶対しません。『あのリングガール態度悪いな』となったら、ボクシングに迷惑をかけてしまう。立ち姿や座り姿はきれいにしようと意識してます」と気を引き締める。
「何よりリングに上がる人間だから分かるんですが、床に飛び散った血が生々しくあったり、ロープを触ると汗がついていたり。我々はすごい場に上がっているんだなと、いつも実感します」
最も印象に残る試合の1つに、村田－ゴロフキン戦を挙げる。村田の試合でリングガールを務めるのは3度目だったといい、「勝っている姿を見ていた分、こんなに素晴らしい選手だけど負けてしまうのかと。勝ったゴロフキン選手も魅力的で、すごく紳士的。『なぜ勝敗をつけなきゃいけないんだろう』『どっちも強い』でいいのにと。どちらかが勝つ、負けるということに悔しい思いをしたのは初めてでした」。
リングの上では笑顔を絶やさない天野だが、この時ばかりは涙ぐんだ。「泣いてないよ、っていう顔をしたつもりだったんですけど」と苦笑しつつ、「『リングガールも涙するくらい、いい試合だったよね』と受け取っていただく方がすごく多かったので、みんなも同じこと思ってたんだと安心しました」と語った。
▽ビール動画10年目に突入
天野は生粋のビール党。13年11月からビールを飲む動画をインスタグラムに毎日アップし続けている。投稿は3300以上を数え、ついに10年目に突入した。撮りだめはしないため、毎日飲んでいるといい「1日1杯、動画に上げる分なので。もちろんそれ以降に飲んでいる日もありますけど、今のところ休肝はしてないです」。食事量をコントロールしながら、節制してビールを楽しみ「やみくもに飲んで体たらくな生活、というのはあまり美しくない」とストイックだ。
母親とその飲み仲間たちが楽しそうにビールを飲む姿に憧れて大人になった。ビールのCMに出演することを投稿の“ゴール”と決めており「CMが来ないと一生やめられないです」と苦笑い。終了すれば残念がるファンもいるはずだが…。「CMの決定はみんなも喜んでくれることだと思うので、ハッピーな意味で終わりたいんです！」。
◆天野麻菜（あまの・まな） 1991年（平3）10月14日、大阪府生まれ。09年に芸能界入り。女優としてTBS系ドラマ「オー！マイ・ボス 恋は別冊で」などに出演。18年11月からリングガールを務める。趣味は落語、サウナ。
