アリスのメンバーでシンガー・ソングライターの谷村新司(本名同じ)さんが10月8日、亡くなった。74歳だった。所属事務所が16日、発表した。葬儀は近親者のみで15日に執り行ったという。

昨年に活動50年を迎え、アリスの記念ライブ「ALICE GREAT 50(FIFTY)」を有明アリーナで11月に開催。アリスメンバーの堀内孝雄・矢沢透と共に「ここからリスタートして10年続けよう」という目標を立てていたが、かなわなかった。

今年3月17日には、急性腸炎のためこのほど手術を行い、今後は当面の間、入院して療養すると発表。同事務所は「精力的に活動をしてきました谷村新司ですが、この度急性腸炎のため手術を行いました。今後は、当面の間入院しての療養が必要となります」などと報告した。その後、同27日に都内で行われた「ALICE POP UP SHOP」に堀内孝雄と矢沢透は出席したものの、谷村さんは欠席した。

6月30日には、定例のクリスマスのディナーショーなどの開催を見合わせ、年内は治療に専念することを自身の公式サイトで発表していた。

9月22日に行われた「ヤンタン展in東京」に出席した堀内は「いま、チンペイさん(谷村)は療養中ということで、3人でお話できないのが非常に残念です。コンサートで早く会えるだろうと皆さん思っていらっしゃると思いますが、もう少しの我慢かなと思っております」。矢沢も「『ヤングタウン』も早く3人でやりたいよね。もうちょっと待ってくださいね。必ずやって来ますから」と語っていた。

谷村さんは71年12月にアリスを結成し、72年3月5日にデビュー。本紙の取材に対し「今思えば、何もなかった時代で、逆に自分たちで工夫をして、それぞれがスタイルを作っていけました。僕らがやってたフォークソングだったり、テレビからは若い10代のアイドルがいっぱい出てきたり、多種多様なものが一気に花開いてきた時代でした」とコメントしていた。

アリスをはじめ、松任谷由実、郷ひろみ、石川さゆりら、昨年50周年を迎えたアーティストは多いが「ライバル意識みたいなものはなかった」という。

これまで生み出してきた曲数は700近くを数える。自身の曲はもちろん、そのうちの100曲ほどは、他のアーティストの楽曲だ。楽曲提供を行う際は、必ず直接コミュニケーションをとってきた。谷村さんの代表曲の1つに「いい日旅立ち」がある。山口百恵さんへの楽曲提供は、ターニングポイントの1つだったという。百恵さんは谷村さんの自宅にもよく遊びに来ていた。本紙の取材に対し「中森明菜さんもそうなんですけど、キラキラと輝いて、楽しそうにやっている裏に、何か秘めているものがあるのでは? とすごく魅力を感じました。百恵さんは引退されて一切表に出ていないですが、自分はこの人と生きていくという覚悟が、彼女の中にはあったんです。『This is my trial(私の試練)』は、自分の帰っていく場所はファンの胸の中じゃありません、という曲。当時は『ここまで書いちゃっていいのかな?』って思ったんだけど、彼女の正直な気持ちを1つの作品にしたいと。まさか、さよならコンサートの1曲目に歌うとは思わなかったので驚きましたが(笑い)。でもそれが、彼女の覚悟だと僕は思いました」と語っていた。

◆谷村新司(たにむら・しんじ)1948年(昭23)12月11日、大阪府生まれ。71年12月、神戸の音楽サークルの後輩堀内孝雄と「アリス」を結成。翌年3月に「走っておいで恋人よ」でデビューし、同5月に矢沢透が加入。「チャンピオン」などヒット曲多数。ソロとしても74年に初のアルバムを発売し、80年に「昴-すばる-」が大ヒット。NHK紅白歌合戦はソロで16回、バンドで3回出場。加山雄三と共同制作した「サライ」や、山口百恵さんの「いい日旅立ち」など楽曲提供も多数。15年に紫綬褒章を受章。