米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは23日、第96回同賞のノミネートを発表した。日本作品では、3作品がノミネートされた。

ゴジラ生誕70周年記念映画「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)が視覚効果賞に、日本映画で初めてノミネートされたほか、宮崎駿監督(83)10年ぶりの新作長編アニメーション映画「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション映画賞、役所広司(68)の主演映画「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督)が、国際長編映画賞(旧外国語映画賞)にノミネートされた。

「ゴジラ-1.0」は日本国内では、封切りから70日間での興行収入(興収)が52億1000万円、観客動員339万人を突破したと発表された。また、昨年12月1日から邦画実写史上最大規模となる2308館で公開した北米でも、日本で86年、北米で89年公開の映画「子猫物語」が記録した、1329万ドルを34年ぶりに塗り替え、邦画実写映画として歴代1位となった。また、41日間で興収4974万ドル(約73億円)を突破し、アニメを含めた日本映画の興収で歴代2位となった。さらに、日本を除いた世界興収も6110万ドル(約88億円)に上り、全世界興収も140億円を突破した。

山崎監督は「まさかオスカーに絡むことができるとは想像してなかったです。新しい扉が開いた感じです。40年ぐらいVFXをやっていて、こんな未来が待ってるとは…。若い頃の自分に聞かせてあげたい。ここから先は、オスカーの雰囲気を楽しみたいと思います」とコメントした。

「君たちは-」は、宮崎駿監督10年ぶりの新作長編アニメーション映画。1月7日(日本時間8日)には、米アカデミー賞の前哨戦の1つとして知られているゴールデン・グローブ賞で、アニメ映画賞を受賞した。宮崎監督作品では、03年に「千と千尋の神隠し」が長編アニメーション賞を受賞。06年には「ハウルの動く城」、14年にも前作「風立ちぬ」がノミネートされたが、受賞は逃していた。同年11月には、黒沢明監督以来、日本人2人目の米アカデミー名誉賞を授与された。10年ぶりのノミネートで、21年ぶりのオスカー獲得なるか、期待がかかる。

スタジオジブリで代表取締役議長を務める鈴木敏夫プロデューサー(75)は、「『千と千尋の神隠し』に引き続き2度目のオスカーがもらえたら、本当に嬉しいです。3月の発表を心待ちにします」とコメントした。

「PERFECT DAYS」は、22年5月に東京で開かれた会見で製作が発表され、ヴェンダース監督とともに役所が主演俳優として登壇。同監督は東京・渋谷区で20年から行われている、世界的に活躍する16人の建築家やクリエイターが個性を発揮して、同区内17カ所の公共トイレを新たなデザインで改修するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」のトイレを舞台に製作。製作にあたり、11年ぶりに来日してシナリオハンティングなどを行い、自ら脚本も担当した。撮影は全て東京で行い、渋谷でトイレの清掃員として働く平山を演じた役所は、23年5月27日(日本時間28日)にフランスで行われたカンヌ映画祭授賞式で男優賞を受賞した。

ヴェンダース監督は「私の偉大な映画界の師、小津安二郎の祖国である日本の代表としてアカデミー賞に参加できることを大変光栄に思います。『PERFECT DAYS』は彼の魂に導かれた作品です。この作品がノミネートされたことは、私にとってこの上ない喜びです」。役所も「良作の多かった今年度の日本映画の中から『PERFECT DAYS』が日本代表作品に選ばれ、このノミネート発表までドキドキしていました。少しだけホッとしました。感謝の気持ちでいっぱいです」とコメントした。

さらにオスカーを2度、獲得した日本出身のカズ・ヒロが「マエストロ:その音楽と愛と」(ブラッドリー・クーパー監督)でメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートした。日本映画及び関係者が4部門にノミネートされたのは、邦画初の作品賞に加え監督賞、脚色賞、国際長編映画賞にノミネートされた「ドライブ・マイ・カー」以来となるが、4部門それぞれが別作品でノミネートという、前代未聞のラッシュとなった。

「原爆の父」と呼ばれた米物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いたクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」が、作品賞をはじめ、最多13部門にノミネート。受賞作の発表や授賞式は、3月10日(日本時間11日)に米ロサンゼルスで行われる。