5年ほど前、山本陽子さんに取材を申し込んだことがある。高齢者を対象にした「シニア新聞」で同世代の俳優、歌手が登場するインタビュー企画だったが、事務所を通して「まだ早いから」と断られた。

その時、76歳だったが、山本さんらしいと思った。10年前に熱海の別荘に移住し、冬はヒール7センチのブーツで歩き回っていた。「シニア」とひとくくりされるのに抵抗感があったのだろう。

野村証券のOLから女優となった山本さんは進取の人だった。20代で買った車はポルシェ。その後に乗り換えたのはジャガーで、さっそうと車を走らせた。亡くなるまで愛車はジャガーだった。人気女優となり、結婚はしなかったが、恋のうわさは絶えなかった。30年前、恋多き作家だった宇野千代さん原作の舞台「おはん」に主演した時に、取材の流れで自身の恋についても聞いた。「40代は恋愛に燃えた時期。結婚したい人はいたけれど、結局、結婚しない人生でした」と振り返った。

生涯女優だった。大劇場で主演した女優は、「主演女優」のプライドもあって、年を重ねてわき役に回る人は少ないけれど、山本さんは違った。小さな劇場で、わき役でも喜んで出演した。演じることが大好きだった。4月にも舞台に出演する予定だった。わずか3日間の公演で、来週から稽古に入る予定だった。最後のテレビ出演となった「徹子の部屋」で「80代は楽しみ。健康な限り、いろいろな役を演じたい」と言っていたが、あまりに短い80代だった。【林尚之】