フジテレビ系アニメ「ちびまる子ちゃん」(日曜午後6時)の主人公まる子(さくらももこ)を34年にわたって演じた、声優のTARAKO(タラコ)さんが4日未明に亡くなった。63歳だった。同局と制作の日本アニメーションが発表した。所属事務所によると、今年に入って闘病していたが容体が急変したという。葬儀は家族葬で執り行い、後日、お別れの会の開催を示唆。生前、最後に演じた出演回は24日に放送予定で、後任などは対応を検討中。前日8日の漫画家・鳥山明さんに続く訃報に、日本の漫画、アニメ界に涙雨が降り注いだ。

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「ちびまる子ちゃん」のテレビ放送が始まった90年の暮れに、TARAKOさんは女優としてただ1度の映画出演を果たしている。「釣りバカ日誌3」で、この撮影現場で素顔を取材する機会があった。

当時29歳。157センチと小柄で、少女の雰囲気を残した丸顔は、アニメのキャラそのままだった。声優さんの取材では「違い」を感じることの方が多いので、これは一つの驚きだった。

主人公の浜ちゃん(西田敏行)が務める会社のOL役で出番は5シーンと少なかったが、撮影中は、彼女の出番のたびにスタッフが笑いをこらえていた。

生の声も「まる子」そのままだからだ。浜ちゃんが隠し持っていたコンドームを見つけだし、それを伸ばしながら、あの声で「何だこりゃ」などのコミカルなシーンが続く。栗山富夫監督の「OK!」とともに毎回爆笑が起こった。

対照的に本人はいたって真面目で、NGを出すたびに「申し訳ございません」と顔を真っ赤にして身を縮み込ませた。監督が「どんなベテランでも失敗しますから」と懸命に励ましていたことを覚えている。

楽天家のまる子ちゃんの、実はナイーブな一面が、そんな姿に重なり、アニメキャラには声だけでなく人柄もにじんでいるのだとその時思った。

34年間、スタッフや共演者が入れ替わる中でずっと演じ続けたまる子ちゃんの声は、あの撮影現場の姿とともにしっかりと耳に残っている。【相原斎】