確かな演技力、よく通るいい声が魅力的な歌舞伎俳優坂東彦三郎(48)が、9月に行われる国立劇場主催公演「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」で、主人公の団七九郎兵衛を演じる。このほど取材会で、ストレートな言葉で並々ならぬ決意を語った。
上方の侠客(きょうかく)の物語。彦三郎が初役で挑む団七は、義理に厚く、色気や愛嬌(あいきょう)を持ち合わせた男。義理が悲劇につながるかなしさ、義兄弟とのきずななどが描かれている。かっこいい役であることは間違いない。
団七役は「予想もしなかった」という。オファーを受けた時のことを「団七(でのオファー)とは思わないで電話に出ているので、『夏祭浪花鑑? はいはい出ますよ。で、団七は誰ですか』と聞いたんです。だから、あなたが団七ですと言われて、何言ってるのか分からなかったです。準備をしてきた今でも、できるかできないか分からないです」と、戸惑いともども振り返った。それでも「やっぱりできない人に仕事が来ないと思っている。多分、安心感を持ってオファーをしてくださったんだろうなとは考えています」とも話した。
作品や役の魅力を語ったり、松本幸四郎に役を教わることなどを話した後、彦三郎が一気に語った。
「団七は、僕の世代では幸四郎さん、(片岡)愛之助さん、(市川)團十郎さん、(中村)勘九郎さん…スターさんたちがやっている役。僕は周回遅れじゃ済まないくらい離されています。ただ、逆転のチャンスはあるだろうなと考えているので、これを機に真ん中に立ちたいなと思います。真ん中に立つだけが歌舞伎ではないですが、このチャンスをしっかりとものにしたいと考えています」
さらに「語弊があるかもしれないですが」と前置きし「歌舞伎役者というのは、使う役者と使われる役者がいると思う。僕は今は使われる役者で、そこに甘んじているつもりはまったくないのですが、日常が進む中、使われる役者で安心していってしまう。その中で挑戦をしていかなければいけない」とも語った。
熱い言葉をたくさん聞いたし、彦三郎の団七が楽しみでしかない。
義兄弟のちぎりをかわす一寸徳兵衛は実弟の坂東亀蔵が、徳兵衛女房を片岡孝太郎がいずれも初役でつとめる。9月1~25日、新国立劇場中劇場。



