東京国際映画祭は22日、27日に開幕する第38回同映画祭のセンターピース作品に決定している「TOKYOタクシー」(11月21日公開)の山田洋次監督(94)に、特別功労賞を授与すると発表した。オープニング作品「てっぺんの向こうにあなたがいる」(阪本順治監督、31日公開)主演の吉永小百合(80)に続き、今年2人目となる。
山田監督は、1961年(昭36)に「二階の他人」で監督デビューして以来、64年にわたり一貫して日本の大衆文化と真摯(しんし)に向き合ってきた。69年に渥美清さん主演でスタートし、96年の渥美さんの死後も2作、製作され19年まで50作が公開された「男はつらいよ」シリーズは、「ひとりの俳優が演じた最も長い映画シリーズ」としてギネス世界記録にも認定、00年代以降は、時代劇の新たな境地を開拓した02年「たそがれ清兵衛」で米アカデミー賞外国語映画部門にノミネート。04年「隠し剣 鬼の爪」は、第55回ベルリン映画祭(ドイツ)コンペティション部門に出品された。
新作「TOKYOタクシー」は、24年に日本アカデミー賞外国作品賞を受賞した22年のフランス映画「パリタクシー」(クリスチャン・カリオン監督)が原作。さえない日々を送る個人タクシー運転手が偶然、乗せた人生の終活に向かうマダムを、東京の柴又から神奈川・葉山の高齢者施設まで送り届け1日、旅をする姿を描いた。倍賞千恵子(84)が85歳の高野すみれ、木村拓哉(52)が個人タクシー運転手の宇佐美浩二を演じた。山田監督が手がけた監督作は、同作まで91作を数える。
東京国際映画祭は「創作意欲は衰えることを知りません。日本人の心の機微と、失われつつある大切な価値を映し出し、映画文化の発展に計り知れない貢献を果たしてこられた山田洋次監督に、心からの敬意を表し、ここに特別功労賞を授与いたします」と授与の理由を説明した。
安藤裕康チェアマンは、コメントを発表した。
山田監督は、戦後の日本社会の現実を厳しく、しかし温かい目で見つめながらそれを映像に結晶させて、長年にわたり数々の傑作を生みだしてこられました。そして何よりも映画をこよなく愛し、内外の映画の過去・現在に幅広い関心を寄せ続け、映画の未来についても真剣に展望してこられました。後進の育成にも心を注いでおられます。このように映画芸術の発展に多大な貢献されたがゆえに、多くの方々から称賛を集めていらっしゃいます。東京国際映画祭も発足以来さまざまな形でご協力を頂き、最近では黒澤明賞の審査委員長としてご尽力頂きました。これらの幾多のご功績に対する敬意と感謝の意を表し、特別功労賞の受賞に心よりのお祝い申し上げる次第です。
センターピース作品とは、37回を迎える前回の同映画祭で初めて設けられた。オープニング作品、クロージング作品と並ぶ目玉作品として映画祭の中盤を盛り上げる大作を上映し、24年は最初の作品として米映画「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」(リドリー・スコット監督)が選ばれた。
◆「TOKYOタクシー」 タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、ある日、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を、東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることに。すみれが浩二に「東京の見納めに寄りたい場所がある」と願い出たことから、2人で彼女の思い出の地を巡ることに。会話を交わし打ち解け、次第に心を許していく中で、すみれは自らの壮絶な過去を語り始める。たった1日の旅が2人の人生に想像もしなかった“奇跡”をもたらしていく。撮影は2月から4月まで東京近郊で行われ、倍賞が諏訪さくらを演じた山田監督の代表作「男はつらいよ」シリーズの舞台・柴又でも行われた。



